通関士試験の難易度の真相!科目免除と合格率の関係について(2019年度)

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通関士試験の「難易度」については、何を基準にされていますか?

「合格率」、「通関実務という難関実務科目の存在」、「法律科目の存在」、「貿易専門用語の存在」などなど、

判断材料はいろいろとあると思います。

ただし、以下のようなデータを見ると、実は「科目免除」が難易度を上げているのではないかと推測できるのではないでしょうか?

目次

科目免除と合格率が関係?
科目免除と合格率に関する考察
法律はいつ変わってもおかしくない
まとめ

科目免除と合格率が関係?

私見に基づきますが、結論からいいますと、科目免除があるおかげで合格率が低く、受験回避(出願していても受験しない)も多いと考えます。

受験回避者の数は、ほぼ毎年2,000人を超えています。

実は、通関士試験の難易度を上げているひとつの要因は、科目免除かもしれません。

ちなみに、令和元年度(2019年度)の合格発表には、ある変化がありました。

それは、受験生の事細かなデータや、科目免除者に関する詳細なデータ(合格率を含む)も税関が公表するようになったことです。

科目免除と合格率に関する考察

以下に令和元年度(2019年度)のデータを用いて科目免除と合格率の関係について考察してみました。

ちなみに最新の令和元年度(2019年度)のデータは以下の税関のホームページより確認できます。

第53回通関士試験の結果について

令和元年度(2019年度)は、6,388名が受験して878名の方が合格しています。
内訳は以下の通りです。

1科目免除の受験者数は567名で、合格者数は71名。合格率は12.5%です。

2科目免除の受験者数は160名で、合格者数は99名。合格率61.9%です。

全3科目受験者数は5,661名で合格者数は708名。合格率は12.5%となります。

このデータを見て、みなさんはどのように考えますか?

「1科目免除されても、合格率は12.5%と低いので難易度の高い資格だ」

「2科目免除されると途端に難易度が下がり、61.9%が合格できるようになる」

「1科目免除で最難関の「通関実務」が免除されても12.5%程度の合格率ということは、「関税法等」が難易度を上げている原因だろうか?」

上述のように思われますか?

これは前年度もほぼ、同様のことを別記事にて書いていますが、

私は、この上記のような思考過程こそが通関士試験の合格率が低く、難易度が高い一因であると考えています。

それは、以下のように考えられるからです。

2科目免除で「通関業法」のみを受験した方の合格率は、61.9%ですが、これは、かなり「低い合格率」だと本来は捉えるべきだと考えます。

なぜそのように考えるかと言うと、この「通関業法」という科目は、他の科目と比較して圧倒的にボリュームが少なく、とにかく暗記して過去問を解いていれば、合格基準である6割は確実に正解することができるからです。

2科目免除の対象者は15年の実務経験がある上に、関係法規に触れつつ、勉強を継続していたはずなのですが、61.9%という数字はかなり低い合格率だと言えます。

しかも、この「通関業法」という科目は、通関業者で通関業務に携わる上では、確実に知っておかないといけない非常に重要な内容を含みます。

別の表現をすると、「通関業法」を知らずして通関業務を遂行することは法令違反をしてしまう可能性があると言えます。

そうなると、通関業務が停止になったりして通関業者が不利益を被るだけでなく、税関としても無駄な業務をこなす必要が出てくることになります。

当然その無駄な業務には血税が使われていることになります。

15年間も通関業務に従事しながら、単純に勉強していなかっただけで済まされる問題でしょうか?

普通に考えると、「単純に勉強していなかったから」などと言う理由を挙げることはできません。

15年の実務経験を経た者が、「通関業法」という非常に重要な科目である上に、圧倒的にボリュームの少ない1科目だけを受験して、61.9%という低い合格率である理由をどのように解釈すればよいのでしょうか?

いろいろ考えても、以下のような理由しか出てきませんでした。

①正しい方法で「試験対策」ができていない

②ケアレスミスが多い

③十分な学習時間が残業や家事、育児で取れない

続いて、1科目免除の合格率を見ていきます。

1科目免除で、「関税法等」と「通関業法」の2科目だけ受験された方の合格率は12.5%になります。

これに関しては「異常に低すぎる合格率」だと考えます。

なぜそのように考えるかと言うと、最難関科目である「通関実務」を免除されている上に、

5年の通関実務経験を通じて関係法規に触れつつ勉強を継続していた方が受験されているからです。

これも、普通に考えると、「単純に勉強していなかったから」などと言う理由を挙げることはできません。

たしかに「関税法等」は「通関業法」よりもかなりボリュームがありますが、試験対策期間として5年の歳月を費やしても合格基準である6割の得点ができないことがあるのでしょうか?

理由としては、2科目免除と同じく、

①正しい方法で「試験対策」ができていない

②ケアレスミスが多い

③十分な学習時間が残業や家事、育児で取れない

というようなことが挙げられるのではないでしょうか。

ただし、ここで科目免除を考慮に入れて再考すると、以下のような要因を付け加えることができると思います。

④ 実務経験を15年積めば、2科目免除があると思っているので、ほとんど勉強をしていない

⑤15年を経て科目免除で通関士合格を目指す姿勢を容認している状況がある

上記の④と⑤は推測の域をでませんが、あまりにも低い合格率については、これらの要因抜きで考えにくいと思われます。

④や⑤の理由で受験勉強もろくにしないという方が大半を占めているのなら、この低い合格率は納得できるのではないでしょうか?

もちろん、社会人が受験することの多い試験であるため、

③の「十分な学習時間が残業や家事、育児で取れない」

という理由を加味する必要はあると思いますが、それは「通関実務」という科目が免除になっているなら、それほど大きな要因になるとは考えにくいでしょう。

そのことついては、以下の記事を読んでいただければ、納得していただけると思います。

通関士試験独学一発合格の基礎(1)通関実務

法律はいつ変わってもおかしくない

科目免除に頼ろうとする依存心が原因で勉強が進まないようなら、難易度が上がるのは当然の結果であり、合格率が低いことも納得できると思います。

最難関の「通関実務」と、ボリュームのある「関税法等」を実務経験でパスしようと考えるのは多忙な方にとっては当然の思考過程かもしれません。

しかし、通関業務に従事する以上は、法律はいつ変わってもおかしくないということも踏まえて合格できるように学習を継続する必要があるのではないでしょうか?

上述の通り、法令違反があれば、税関としても無駄な業務をすることになり、そこには血税が注ぎ込まれることになります。

また、

「少子高齢化でマンパワーが不足してくると、バックアップ体制も崩れ、引継ぎなども上手くいかなくなる可能性が高まるので注意して欲しい。」

という言葉は税関が主催する研修でよく耳にすることです。

現状としては、すでに人手不足が深刻な現場も増えてきているのではないでしょうか?

年々、法令違反が多発する可能性が高くなっている状況と言えます。

法令違反が増加すると、税関も多くの時間をその対応に割くことになります。

そこで、

統計上の法令違反の増加と、通関士試験の法令科目の合格率との関係が浮き彫りになったときに、それを財務省がどのように捉えるかによっては、今後の科目免除という制度のあり方が変わってゆく可能性があるのではないでしょうか?

科目免除という制度自体が廃止になる日も遠くないかもしれません。

そう考えると、通関業務に従事する以上は、早急に通関士資格を取得しておくべきだと考えます。

「科目免除を使って合格することが正規ルートかもしれない」と言うような言葉をネット上で見たことがある方もおられるのではないでしょうか?

科目免除で合格された方への配慮なのかも知れませんが、3科目受験で通関士試験に挑まれている方にとっては何の気休めにもならない言葉だと私は思います。

現行の法律で科目免除がある以上、「正規ルート」であることには違いないと思いますが、

「独学」で「一発合格」を標榜して3科目受験される方を対象とし、お金を支払わなければ肝心の情報を見ることができないサイトであるにもかかわらず、士気を下げるような記事だけは全面公開することは何のメリットがあるのか疑問を感じます。

学習意欲を無くして時期を逃してしまえば、得をするのは誰であるか考えて情報の取捨選択をする必要があるかもしれません。

経済や法律なども含めて社会全体が急激に変化している時代に我々は生きています。

時代にそぐわないと思えば、疑問を呈して、変えていくように努力してみることも重要だと思います。

以下の記事は、私が科目免除について財務省に問い合わせをした内容を記録していますが、通関士制度の成り立ちや歴史、変革の可能性についても言及した記事内容となっていますので、ご興味があれば、ご一読ください。

通関士試験の難易度を上げる?科目免除に関して財務省に問合せた結果

まとめ

上記のように考えると、科目免除などの情報は不要情報とみなして合格に専念すべきではないでしょうか?

法律が変わって科目免除がなくならないように祈るよりも、合格のために気持ちを切り替えて学習していくことが重要だと思います。

全科目(3科目)受験で合格したとなると、情報分析・情報処理能力が高いと評価されて然るべきだと思います。

日頃から熱心に法解釈や法律の運用をされている税関職員の目に合格したあなたは、どのように映るでしょうか?

同僚・後輩・上司の目に、合格したあなたはどのように映るでしょうか?

この辺のことを頭の片隅に置いて勉強に取り組むだけで良いと思いませんか?

ただ、そうは言っても、仕事をしながら合格するのは難しい資格ですので、健康管理には十分気をつけて無理をしない程度に勉強を積み重ねていく必要があります。

社内の協力体制も重要だと思います。

そして、

独学で一発合格するためには、セオリーを知り、自分に合った勉強方法で臨むことが最も重要なことです。

セオリーをきちんと踏まえて、独学で短期一発合格できるための学習をスタートするに当たって、以下の記事が参考になればと思います。

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名前:スギモト 通関士試験(平成18年度)を6か月の勉強期間を経て短期合格しました。 通関士試験に短期で合格するための情報を集めてみました。 通関士試験合格を目指す方のお役に立てれば幸いです。