通関士試験を合格すると転職に有利か?

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通関士試験に合格すると、転職する際には有利になるのでしょうか?

結論から言うと、有利です。

有利であるとする理由をまとめてみました。

目次

1.事務職では稀な未経験可
2.ニッチな職業
3.兵站(ロジスティクス)
4.難易度の高い実務試験
5.まとめ

1.事務職では稀な未経験可

「通関士」「転職」「求人」といったワードを入力して検索してみると、

かなり多くの求人を見つけることができると思います。

事務職の職業というと、どういった種類を思い浮かべますか?

人事、営業、経理、購買など様々な職種があります。

例えば、

「転職」「購買」と入力してみると、かなり高給の求人を見つけることができると思います。

しかし、その求人を詳しく見てみると、必ず経験年数やマネジメントの地位(課長や部長)を経験しているかを問われていることが多いと思います。

事務職というと、かなりの経験がないと転職できない傾向にあるのが特徴と言えます。

そんな中で、通関士のキーワードを入力して求人を探してみると、「通関士試験合格者歓迎・未経験可」という条件も見つけることができると思います。

なぜ通関士試験に合格していれば、未経験者でも雇用してくれるのでしょうか?

以下、いろいろな要因について見てみましょう。

2.ニッチな業界

ニッチというと「隙間」のことを言います。

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壁龕(へきがん)またはニッチ(niche)

ニッチとは古典的な建築物にみられる「隙間」が起源です。

「隙間」から何をイメージしますか?

上の写真では、像が収められているのが「ニッチ(隙間)」ですが、必要のないように見えて、これを無くしてしまうと全てが台無しになると思いませんか?

ニッチ市場というと、特定の需要と供給を持つ小さな市場のことを指します。

小さいながらもきちんと需給の関係が成り立っている市場だと言い換えることもできます。

通関士が活躍する市場とは、まさにそういったニッチ市場と言えるかもしれません。

それはなぜかと言うと、通関士が働く通関業者が介在する市場とは、貿易を中心とした物流業界だからです。

貿易は文明が存続する限りは無くなることは無いと言っても過言ではありません。

いかに日本経済が縮小しようとも、貿易に関係する物流業界はなくなることは無いでしょう。

日本は特に貿易を中心とした物流がなければ成り立たない国です。

現在の日本は、どの業界でも少子高齢化の影響によって人材不足となっています。

もともとニッチ(隙間)だったところにいた人も減少しつつあります。

こうしたことが上述の、「通関士試験に合格していれば、未経験者でも雇用してくれる」という背景にあると考えられます。

しかし、それだけの理由で未経験可なのでしょうか?

3.兵站(ロジスティクス)

よく物流のことを「ロジスティクス」と呼びます。

生産した物を生産者から消費者へ引き渡すことを指しています。

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もともとは、「ロジスティクス」とは戦争の「兵站(へいたん)」のことです。

「兵站(ミリタリー・ロジスティクス)」とは、簡単に説明すると戦線を維持するために弾薬や食料を補給したり、備蓄したりする一連の流れのことを指します。

戦争では、「必要なものを」「必要な時に」「必要な量を」「必要な場所に」届けることができなければ敗北してしまいます。

過去に日本がロシアに勝利した「日露戦争」では、勝っているにもかかわらず、日本の軍隊の兵站が上手く機能せず、戦争が継続できなくなってしまいました。

一方で、ロシアは補給物資と兵站が整っており、シベリア鉄道を介して続々と前線に補給をし続けていました。

講和条約を結ぶのが遅れていたら、反撃を受けて敗北していた可能性もあるようです。

戦術的に勝利はしたものの、兵站が原因で戦略的に敗北したということでしょうか。

余談になりますが、結果として、ロシアから講和条約では賠償金が取れませんでした。これに対して国民が怒り狂い、東京ミッドタウンから見下ろせるあの日比谷公園を起点として焼打ち事件が起こったということは有名な話です。

日本はもともと物資が乏しかったという理由もありますが、兵站は戦争の勝敗の鍵を握る非常に重要な役割を果たすのです。

物資が乏しいというと、日本の状況は昔も今も変わりありません。

貿易を介して、海外から物を輸送しないと日本経済は成り立ちません。

ロジスティクスが停滞すれば、日本は世界市場から敗退し、食料難にも陥り、混迷の時代に入るでしょう。

そういった意味では、

「貿易物流は生死をかけた戦争の兵站(ミリタリー・ロジスティクス)の一部と同じである」

と言っても過言ではありません。

貿易物流業は日本経済を支える上で非常に重要な役割を担っているとも言えます。

そう考えると、製造業などの大手企業が立ち行かなくなったとしても、この業界がなくなるということは極めて考えにくいでしょう。

仕事は減るかもしれませんが、絶対になくならない業界であると言えます。

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通関士試験では貿易実務用語についても多少は学ぶ必要があります

通関士は、貿易物流業界という重要な役割を担う業界で、必要不可欠な専門職業人です。

そういった観点からも通関士試験を合格しているということは評価されるということです。

しかし、通関士試験に合格していることが評価される要因となる理由はそれだけではありません。

通関士試験の3科目受験の難易度は高く、中途半端な試験対策では合格できないという要因も大きいと考えられます。

4.難易度の高い実務試験

通関士試験では「通関業法」と「関税法等」という法律科目があります。

コンプライアンス(法令順守)が重視されている昨今、どのようなことをすると違法となるのかを知っておくということは非常に重要なことです。

日本が法治国家であり続ける限り、通関業務に直接的に携わらない場合でも法律は知っておく必要があることは言うまでもありません。

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通関業界で必要な法律知識を持っているということは、貿易に関わる様々な関係当事者とのやりとりを円滑にする上で非常に重要なことです。

雇用主にとっては法律を知らないで通関業務に携わる者がいれば、業務停止になる可能性もあり、死活問題となります。

通関士試験に合格しているということは、関係当事者とやり取りする際に非常に重要となる法令についての基礎的な教育が終了していると考えることができます。

さらに、上記2科目に加えて、通関士試験では、「通関実務」という実務科目があります。

この「通関実務」という科目は、3科目中で最も難易度が高い科目となります。

実際に通関実務に携わっている現役通関士が間違えるような問題が出題されることでも有名です。

そんなことを言うと受験しようと思っている方は、不安に感じるかもしれませんが、基本・頻出レベルを意識して対策していれば実務に携わっていなくても合格レベルには到達できます。

ただし、試験問題慣れをするためにかなりの時間をかけて勉強する必要がある科目であると言えます。

当たり前のことですが、通関士試験に合格しているということは、法律科目に加えて、この「通関実務」をクリアしているということです。

それは、雇用する通関業者にとってみれば、教育費用のかからない可能性が高い人材であるということが、雇用する前の段階で判明しているということです。

どういうことかというと、

採用した人を通関実務に従事させようとする時には、本来は税関が主催する「通関従業者研修」などの研修に行かせたり、それなりの教育期間をかけて育てる必要があります。

通関士試験に合格していれば、そうした教育費用を抑えることができます。

また、通関実務に関する基礎的な内容の教育も、NACCSというシステムに触れていないだけで、ほぼ終了しているということになります。

さらには、インコタームズといった貿易実務の知識も多少なりともインプットされているため、教育の手間や時間をかけないで済む可能性が高いということになります。

例えば、通関士試験に合格していない新卒者を雇用して、通関実務を担当してもらおうとしたとします。

「通関従業者研修」に行かせることは当たり前だと思いますが、その他の研修に行かせたり、通関士試験に合格するためのサポート体制を取ったりする必要があるかもしれません。

これによって、多少なりとも誰かの業務時間が奪われ、最悪の場合は、誰かが新人教育のために残業をする必要があるかもしれません。

そういったことは全て新人教育費用というコストとして計上できるものです。

新人教育にかかるコストは、単純なものではなく、実際にはかなりのコストがかかっているのです。

これが、余裕のある勤務状況の場合であれば教育する方も、教育される側にとっても負担とはなりにくいかもしれません。

しかし、台風が直撃してコンテナが流出したりする突発的なトラブルや、春節、国慶節、水かけ祭り、ストライキなどの影響を受けると修羅場となりがちなのが、この業界の特徴とも言えます。

そんな中で、通関士試験を受験していた新人が不合格になって落ち込んでいてもサポートしてあげられなければ、辞めてしまうかもしれません。

通関士試験のテキストや問題集を書店やアマゾンの中身検索で見てみると、物流業界というのは「専門的で特殊な業界」だと分かると思います。

そして、通関士試験の問題を解いてみると、「難問・奇問」を出題する人がいることも分かると思います。

要するに物流業界の修羅場を早いうちから何度も味わった挙句、通関士試験の修羅場にも直面してしまい、ろくでもない思いをさせてばかりだと、新人教育費が無駄になる場合も多いということです。

(試験問題を簡単にする必要はないと思いますが、常識的な出題をするべきだと思います)

要は、通関士試験に合格しているだけで、以上のような新人教育に関する費用やリスクを低減できる可能性があるということです。

そういったことを念頭に置いている雇用者は、「通関士試験合格者歓迎・未経験可」と書いて募集している場合があると考えることもできるということです。

5.まとめ

以上のようなことを踏まえて、通関士試験を合格していれば、多方面で益になることが多く、結果として転職にも就職にも有利であると結論づけることができると思います。

通関士試験を合格するのは決して楽ではありませんが、転職を考えておられる方や、学生の方にとっては、合格しておけば有利になることは間違いありません。

貿易業界は輸出入に携わって物を動かす上で様々な専門的知識を要します。

輸出入の担当者がいなければ、物を動かすことはできないでしょう。

しかし、税関との間に立って、法律という関を通過させることができるのは、通関士だけです。

輸出入に関してはプロであったとしても、通関士でなければ通関手続きは全うすることはできないのです。

日本が法治国家であり続ける限り、通関士がいなければ貿易をして物を動かすということはできないのです。

受験を決断して、試験対策をされる場合は、以下の記事を参考にしてみてください。

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名前:スギモト 通関士試験(平成18年度)を6か月の勉強期間を経て短期合格しました。 通関士試験に短期で合格するための情報を集めてみました。 通関士試験合格を目指す方のお役に立てれば幸いです。