通関士試験では、独学で合格することはできないのでしょうか?
いろいろなネット上のサイトを見ていると、「経済効率だけを考えた独学は無謀であり、一刻も早く、通信講座や予備校に切り替えた方が良い」
とか、
『通関士試験の合格率が2桁を切るようになってきていることから、「独学で合格できる人」は減少しており、近年の合格者のほとんどは、何らかの予備校や通信講座を使って合格している。独学という手段を選んで合格できる人は稀で特殊である』
というようなことが書かれていました。
本当にそうなのでしょうか?
目次
1.独学で合格できる人は特殊か?
2.なぜ独学を選択するのか?
3.独学では合格が難しいのか?
4.向き不向きがある
5.セオリーを無視すると失敗する
6.合格するスタイル
7.まとめ
1.独学で合格できる人は特殊か?
「通関士試験の合格率が低迷し、独学で合格できる人は稀で特殊である」
と言われると、なんだか褒められているような気分になりますが、
「通関士試験で、経済効率だけを考えた独学を選択するのは無謀」と言われた上で、そのように言われると、何だか複雑な気分になりますね。
しかし、言っていることは正しいような気もします。
「合格率が低く、難しい試験を、経済的な効率性のみを重視して、独学を選択している人は特殊で稀である」
そうかもしれません。
「近年の合格者のほとんどは、何らかの予備校や通信講座を使って合格している」
そうかもしれません。
しかし「そうかもしれません」としか言いようがないです。
もしこれらの情報に、通関士試験の全会場で出口調査した結果が参考資料として提示されていれば、確実にそうだと納得するかもしれませんが、
独学をする人が、受験者のどのぐらいの割合を占めるかなどについての詳細なデータはないようです。
合格者の中で、通信講座と予備校を利用した方が占める割合もはっきりとしたデータがありません。
ちなみに、私も自分の経験や周囲の方から得た情報を用いて説明することはありますが、あくまで、個人の意見として参考にしてもらえるように書いています。
また、根拠となる情報源や統計があれば、参考文献や出典という形で見えるような形にして記事を書くように心がけています。
2.なぜ独学を選択するのか?
私のプロフィールを見てもらえると分かると思いますが、
「仕事をしながらも通勤時間をフルに使って隙間時間を有効活用して」合格に漕ぎつけたのです。
予備校や通信講座を利用できる時間があったなら、利用しています。
まあ、通信講座に関しては当時は、コンパクトで効果的なものがあることを知らなかったというのはあります。
私もそうですが、そもそも、経済効率だけを考えて独学を選択する人は少ないと思います。
時間的な余裕があれば、ボリュームのある分かりやすい講義を受けるのが良いに決まっています。
有名予備校講師の授業を受講するのは効果抜群なことぐらい知っています。
難しい部分を分かりやすく教えてくれて、講義だけ聴いていればいいのですからストレスが少なく効率も良いはずですよね。
(ただし、分かりやすい予備校ばかりとは限りませんよね。)
では、なぜ独学を選ぶのか?
忙しくて、講義を受けられるようなまとまった時間を捻出できないからです。
予備校でも通信講義なら可能かもしれませんが、通学型などは、会社で勤務時間の都合をつけてくれるなどの体制が整っていなければ、ほぼ不可能です。
残念ながら、私の場合は、通関士試験を受験するからという理由で定時に帰れるように調整してくれるような会社ではありませんでした。
もちろん「経済的な側面」や「地理的な側面(予備校の場所)」といった要素もあると思います。
3.独学では合格が難しいのか?
通関士試験の難易度も上がり、合格率も2桁を切るようになって、非常に厳しくなっていることは事実です。
私の周囲でも不合格になった方を知っています。
2年目から通信講座に切り替えて合格した人も知っています。
独学で2年目で合格した人もいます。
ただ、予備校に通っても通信講座を受講しても落ちている人はいます。
不合格になっている人で共通していることがあります。
たいていの人が、自己採点をした結果、1年目は「通関実務」で不合格になっている場合が多いことです。
少なくとも私の知る範囲では、不合格になった方は「通関実務」で落としています。
「通関実務」という科目は解き方に関しては慣れが必要ですが、特別な講義を受けなくても、「関税法等」や「通関実務」を全く勉強していなくても、テキストを読みながら解くことができます。
ただ、試験で得点するためには、問題慣れしておく必要があります。
貨物を分類する思考過程や判断能力、正確に計算する能力を身につけて、全体的な処理速度を上げておく必要があります。
「通関実務」の対策をする上では、独学も通信講座も予備校も関係ないと思います。
「机に向かって、複数の書類を照合しつつ、電卓を叩いて計算するという演習の勉強をできる時間をいかにして作り出せるか」という、「時間的な側面」が一番の問題となると思います。
したがって、「独学では合格が難しい」とは一概には言えず、
逆に、「通信講座や予備校ならより合格しやすい」とも言いにくいと思います。
セオリーを踏まえて、どう取り組むかが問題となってくると思います。
4.向き不向きがある
初めて触れる法律の条文などに抵抗感がある方は、予備校や通信講座は有利に働くかもしれません。
しかし、講義だけを受講していれば模試や本試験でも良い結果が出せて合格できるのでしょうか?
記憶力の良い方は、講義だけ受ければ、全て記憶してしまえるでしょう。
さらに、応用力のある方は、模試や本試験でもその記憶した内容を適切にアウトプットできるかもしれません。
私が思うに、そのような方こそが特別で稀なのではないかと思います。
予備校の講義を受けて理解でき、知識が定着していても、模試や問題集を解いてみると、できなかったという人もいると思います。
予備校のような授業形式では頭に入らず、自分のペースで参考書を読み解く方が頭に入ると言う方もいます。
これとは逆に「テキストを読むのが苦手」と言う方もいます。
要は、人それぞれに合った方法で勉強を進めていくしかないのであり、
「予備校・通信講座の方が良い」などということは一概には言えないと思います。
これは上述した「時間的な側面」だけでなく、「向き・不向き」といった面も考慮する必要があるということだと思います。
ただし、テキストを読んでいても誤った解釈をしていたり、
テキストを理解するのに時間をかけすぎて問題を解く時間がほとんどなかったり、
法改正や試験方式の変更を見逃していたりと言ったような事態は予備校や通信講座の場合は陥りにくいと言う利点があると思います。
5.セオリーを無視すると失敗する
いろいろな向き不向きがある中で、時間的な側面も考慮して、勉強時間が確保できているのに合格できないと言う方は、
合格するための「セオリー」を無視したスタイルで受験勉強をしているのかもしれません。
予備校も通信講座も独学も、セオリーを無視すると失敗すると思います。
例えば、
「講義やテキストで知識を身につけているが、問題集をほとんど解かない」
「完璧に全てのことを把握してから受験に挑もうとしている」
「通関実務は直前短期集中でやろうと後回しにする」
「基本・頻出レベルの問題を意識しないで総当りで問題を解いている」
といったセオリーを無視したスタイルで勉強を続けていても合格は難しいと思います。
合格している人は、セオリーを押さえた「合格するスタイル」で受験勉強に取り組んでいると思います。
6.合格するスタイル
セオリーを押さえた合格するスタイルとは、
「自分の状況に最適な教材を選択する」
「通関士試験の試験範囲を正しく知る」
「通関実務を最優先する」
「基本・頻出レベルの問題を多く解く」
「短時間でも毎日集中して学習し、必ず復習する」
といったことを継続できることです
7.まとめ
結局はセオリーを押さえて、自分に合ったスタイルで臨めば、通信講座、予備校でなければ合格できないなどということはないと思います。
ただし、独学でテキストや問題集を選び間違えれば、失敗につながるリスクはあります。
しかし、それは通信講座や予備校も同じです。
「セオリー」を念頭に置いて、参考書や問題集を見たり、予備校の講義スタイルを確認していると見えてくると思いますが、短期合格を目指す上では絶対に選ぶべきではない予備校や参考書・問題集がこの業界には少なからず存在しています。
それさえ避けることができれば、後は「座って書いたり電卓を叩いたりして勉強できる時間」をいかに創出できるかにかかっていると言っても過言ではありません。
テキストや問題集については、以下の記事をご覧ください。