通関士試験の難易度を上げる?科目免除に関して財務省に問合せた結果

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今回は、通関士の難易度と関係していると思われる「科目免除」について、財務省に問合せてみました。

なお、2019年度の通関士試験の合格発表がありましたが、ある変化がありました。

その変化とは、科目免除に関して詳細なデータが税関のホームページにて正式に発表されるようになったということです。

将に、以下の記事で述べているような変化が起ころうとする兆しかもしれません。

科目免除や合格率を踏まえた2019年度の通関士試験の難易度についての詳細は以下の記事を読んでみてください。

通関士試験の難易度の真相!科目免除と合格率の関係について(2019年度)

さて、今回の記事の内容は、通関業法の頻出項目も盛り込まれているので、テスト対策になる話でもあります。

目次

1.財務省に根拠を問合せてみました
2.通関士制度の歴史的な経緯
3.結論として最後にするべきこと1つ

1.財務省に根拠を問合せてみました

近年ますます難易度が上がっているように見える通関士試験ですが、5年・10年を区切りとして「実務経験で難関科目が無条件で免除になる」のは、どのような根拠があるのか、メールで財務省に問い合わせてみました。

「通関士試験科目免除について」という題名で財務省の意見箱に以下のお手紙(メール)を入れてみました。

いつもお世話になっております。通関士試験科目免除についてどのような理由・根拠があって、実務経験による免除がなされるかご教示ください。

 5年の実務経験で通関実務が免除となり、15年の実務経験で核とも言える「関税法等」2科目が免除となります。通関士試験問題全体が難化し、通関実務の問題は近年特に難しくなってきており、難問・奇問が出題される資格試験として知られるようになってきています。 

実務経験による実務科目(通関実務)免除は妥当かと思われますが、15年の実務経験があれば、中核とも言える関税法等の法律の科目が免除されるという根拠はどこにあるのでしょうか。 

初めから実務経験を重視するのであれば、試験問題の難易度を年々上げていく必要はあるのでしょうか。 

このような科目免除があることは、入社1年目から合格を目指す者に対するモチベーション低下に繋がるとともに、古参の社員で通関士試験に合格できないか、もしくは合格しようとせず科目免除で取得を目指す者との間で資格手当てなどを巡り軋轢を生むようなことにもなりかねず、非常に不公平であると感じます。


これに対して、財務省より翌日には迅速に返事が届きました。

ご質問いただきました通関士試験科目の免除につきましては、通関業法第24条に規定されており、これを根拠とするものとなります
当該規定の趣旨は、通関業務を行うには、実務経験によって得た知識、能力が重視されることから、通関業者の通関業務又は官庁における通関事務その他関税に関する事務に従事した期間が一定期間に達している者に対し、それらの者の実務経験を尊重して試験の一部を免除するものです。いただきましたご意見も参考として、引き続き、適正な通関士試験の執行に努めてまいります。

それでは、この迅速な回答の中に登場した「通関業法第24条」と「通関業法23条」を見てみましょう。

第三章 通関士
第一節 通関士試験
(通関士試験)
第二十三条 通関士になろうとする者は、通関士試験に合格しなければならない。
2 通関士試験は、通関士となるのに必要な知識及び能力を有するかどうかを判定するため、次に掲げる科目について行なう。
一 関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第六章に係る部分に限る。)
二 通関書類の作成要領その他通関手続の実務
三 通関業法

(試験科目の一部免除)
第二十四条 次の各号の一に該当する者に対しては、その申請により、通関士試験において当該各号に掲げる科目の試験を免除する。
一 通関業者の通関業務又は官庁における関税その他通関に関する事務で政令で定めるものに従事した期間が通算して十五年以上になる者 前条第二項第一号及び第二号に掲げる科目
二通関業者の通関業務又は官庁における通関事務で政令で定めるものに従事した期間が通算して五年以上になる者 前条第二項第二号に掲げる科目

出典「通関業法」

通関業法第24条とはこのように科目免除について規定しています。

みなさんは条文を見て、どのように考えますか?

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どのように解釈すれば、科目免除して良いということになるのか?

何を根拠に科目免除があるのか疑問に思いませんでしたか?

結論からいうと以下のような財務省の方の返事どおり、「解釈するまでもなく、条文で規定されているから」ということになります。

通関士試験科目の免除につきましては、通関業法第24条に規定されており、これを根拠とするものとなります。」

たとえば刑法における『「暴力」とはどのようなものか』といったような、人によって「暴力」に関する概念が変わる可能性があるものについては「法解釈」の余地があるのですが、

通関業法第24条は規定(条文)通りで、解釈の入る余地はないということになります。

では、それだけでは納得いかない場合は、どのようにすれば良いのでしょうか?

それは、そもそもこの法律(条文)自体が妥当かどうか、立法そのものの妥当性について考えることとなります。

例えば、「尊属殺人」などは、つい最近まで条文が残っていたのですが、もちろん、そういった妥当ではないと判断された法律は随時改正されています。

そうなると、この法律の立法趣旨や妥当性については、この法律(この条文)ができた経緯、歴史を踏まえて考える必要があるということになってきます。

2.通関士制度の歴史的な経緯

以下の歴史的経緯が税関ホームページに通関士制度の概要としてあります。

我が国の通関士制度は、関税の申告納税制度への移行に伴い昭和42年に通関業法が制定された際に導入され、適正かつ迅速な通関を実現するうえで重要な制度として定着したものとなっています。
通関手続が適正かつ迅速に行われるためには、通関業者が税関官署に提出する申告書類等の通関書類が適正であることが必要です。
このため、通関業務に関する専門的知識、経験を有する専門家として、原則として通関業務を行う営業所ごとに通関士を置き、税関官署に提出する申告書類等の内容を審査させなければならないこととされています。
通関士とは、国家試験である通関士試験に合格した者のうち、勤務先の通関業者の申請に基づく財務大臣の確認を受け、通関業務に従事する者をいいます。(通関業法第13条、第14条、第23条、第31条)

出典:税関ホームページ 通関士制度の概要

通関士制度ができて、令和元年となった今、52年を迎えることになります。

「申告納税制度に移行したため、適正かつ迅速な通関を実現するうえで重要な制度として定着した」と書かれています。

貿易取引の拡大に伴い、賦課課税方式から申告納税方式へと変革した歴史的な背景が見て取れます。

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1960年代以降に急速に始まるコンテナ輸送と貿易の拡大
日本初のコンテナ船は1968年に日本郵船が製造

もう少し詳しく調べてみると、昭和42年(1967年)に「税関貨物取扱人法」から「通関業法」が施行されて通関士制度が確立しました。

それ以前は、資格なしで働いていた人がいるわけですが、この通関業法の条文は、その人たちとの整合性を考慮して作られたと考えるのが自然です。

いきなり全科目を受験させて、通関士になれる人が1人もいなければ、不都合が生じることになるので、このような科目免除を作ったと考えるのが妥当でしょう。

例えば、来年度から急に、通関業法第24条が改正されて実務経験に基づく科目免除がなくなったとします。

いままで科目免除の申請が出来た方々は、「通関実務」や「関税法等」を急に受けろと言われても困るかもしれません。

そこで、整合性を取るために、

『科目免除廃止の改正法施行日以前に通関業務に従事していた者は、従来通り「実務経験に基づく科目免除」を受ける権利を有する』などという例外規定を期限付きで定めたりするかもしれません。

法律とはそのようなもので、その時々の状況によって変わっていくものです。(このようなことから、毎年法改正があると考えて、参考書は買い換えないといけないのです。)

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コンプライアンス(法令順守)が強く求められている昨今では通関業法の罰則も強化され、AEO制度も新たにできました。

こういった背景から、通関業法24条規定の趣旨自体が現在の状況に合わないというのであれば、立法によってこの条文自体を削除するしかないということになります。

昔は、大学教授の実務経験があれば弁護士になれた時代もありました。税理士も、簡易裁判所の裁判官も、行政書士も同じような制度はありますので、妥当かどうかはなかなか難しい判断かもしれません。

ただ、上記の資格で行政書士以外は実務経験に基づく科目免除はなくなっています。

ここで、もう少し通関士制度の概要を詳しく見てみましょう。

「通関手続が適正かつ迅速に行われるためには、申告書類等の通関書類が適正であることが必要(中略)このため、通関業務に関する専門的知識、経験を有する専門家として、(中略)税関官署に提出する申告書類等の内容を審査させなければならない」となっています。

このような経緯から創設された通関士は専門的知識と経験の両方を必要とされていると考えるのが妥当であると思います。

ここで、5年の通関実務に従事したものが、「通関実務」を免除されるのは十分納得がいきます。

しかし、15年「通関実務」を積んだなら根幹・中核ともいえるべき法律科目「関税法等」が無条件で免除していいと、どう判断すればそのようになると言うのでしょうか?

(通関業法24条が根拠にあるのは承知なのですが、「当時は整合性しか考えていなかった」では考えが古過ぎると思いませんか?)

15年の経験があれば、「法律的な面も十分理解して、適正な申告ができるだろう」という根拠はどこにあるのでしょうか。

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物事はどの角度から見るかで見え方が違ってきますよね

始めから財務省と税関が法整備と実務を取り仕切っており、通関実務に携わるものは、ある程度法律を理解しつつ適正かつ迅速に書類を作ってくれれば良いということなのでしょうか?

しかし、「申告書類等の内容を審査させなければならない」とも言っています。

つまり、産地証明書や非該当証明書、動物・植物検疫証明書なども含めて審査する能力を要求されている訳です。

ここで、話は少し変わりますが、テストにも良く出る「通関士の懲戒処分」について見てみましょう。

通関士に対する懲戒処分(通関業法第35条)では、「通関士が通関業法に違反したとき」および「通関士が関税法その他関税に関する法令の規定に違反したとき」は懲戒処分を受けることになっています。

懲戒処分の内容は通関士本人に財務大臣より通知されます。

懲戒処分の種類は「2年間の従事禁止」「1年以内の期間を定めた従業停止」「戒告」の3種類です。(この辺は試験頻出項目です)

かなり厳しい処分が会社ではなく通関士本人に通知され、さらに遅滞なくその旨を公告されます。

以上のような重責を担わされる訳ですが、やはり15年の実務経験があれば、当然法令に対する知識も十分備わっているとみなされて「関税法等」の科目は免除となるようです。

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税関職員の皆さんの努力により、大きな密輸事件や法律違反(非違)は未然に防げているので、実務経験があれば法律科目の合格などは問題ないということでしょうか?

何か事が起こったら、「国家資格に合格して、財務大臣の確認を受けて通関士として仕事しているのだから、法律も実務も熟知した上で書類を審査していたはずなのに、なぜ法律違反が起こるのですか?」と税関から言われ、双方とも業務に支障をきたし、税関が対応にかかった余分な時間には血税が使われるのです。

コンプライアンス(法令順守)が強く求められており、通関業法の罰則も強化されています。

時代も少子高齢化で人材不足であり、今まで通りバックアップし合って、法令に違反しないようにする体制が崩れつつある状況です。

そろそろ実務経験による科目免除はやめる時期に来ていると考えて然るべきではないでしょうか?

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そして仮に通関実務による科目免除を段階的にやめていった時に、得点率と合格率が顕著に増加していくような現象が起これば、「科目免除に依存していたので、法律科目を勉強していなかった」ことが浮き彫りになります。

通関士試験の難易度を上げている要因が科目免除にあったと実証できるかもしれません。

これは、通関業法34条の科目免除をやめるように動くだけで、通関士試験の合格率が右肩あがりになる可能性があるということを意味します。

そうなれば、財務省の方にしてみれば、法令順守の意識向上を促すことができたと言えるのではないでしょうか。

単純に合格者数が増加して通関士が増えることは、業界全体の法令順守向上を促す結果に繋がっていくと考えるのが妥当ではないでしょうか?

古い習慣や法律に着目して見直すべき時期がすぐそこに来ているような気がします。

3.結論として最後にするべきこと1つ

もしかすると、近い将来、上述のような考えで法律が改正されるかもしれません。

通関業法が導入され、AEO制度も導入され、罰則も強化されてきた経緯を見ても、

「法律はいつ変わってもおかしくない」ことを認識できると思います。

結論として、最後にするべきことは1つです。

制度が改正にならないようにみんなで祈りましょうということではなく、

実務経験による科目免除など、いつなくなってもおかしくない制度であることを念頭に置いて、一刻も早く合格できるように勉強に集中するということです。

「科目免除が正規ルートかもしれない」などという甘い言葉は数年後には見かけなくなっているかもしれません。

科目免除が廃止になるというような事とは関係なく、単純にこういう甘言に影響されることで、誰が一番得をするのか考えてみることも大事です。

とにかく、科目免除のことは頭の片隅に追いやって、短期合格できるように勉強に集中しましょう!


科目免除に関する「概要」についても記事を書いています。

また、「合格率への影響(難易度への影響)」についても他に記事を書いています。

参考までに読んでみてください。

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名前:スギモト 通関士試験(平成18年度)を6か月の勉強期間を経て短期合格しました。 通関士試験に短期で合格するための情報を集めてみました。 通関士試験合格を目指す方のお役に立てれば幸いです。