最優先すべきセオリーの記事を読んでくださっている方にとっては、もはや少しも大げさに感じなくなっているかもしれませんが、山岳登山・山岳遭難に例えて考えてみたいと思います。
(山岳登山など一瞬の判断ミスが命取りとなるような世界の話はいろいろな意味で参考・教訓となります。ビジネスの世界でも山岳登山から部下に危機管理能力を学ばせるという会社もあるほどです。)
まだセオリーについて読まれていない方は、絶対不可欠な知識ですので、以下の記事を先に読んでみてください。
目次
1.前回の内容について
2.遭難事故(不合格)を避けるスタイルとその種類
3.結論としてはどれがおすすめか
4.個別性を考慮したスタイルの選択
5.予備校(シージ・スタイル)
6.独学・通信講座(アルパイン・スタイル)
1.前回の内容について
能力や経験があってもセオリーを知らなかったり、無視すると不合格(遭難事故)になります。
通関士試験不合格は遭難と同じで失うものも場合によってはあります。
遭難事故(不合格)を避けるためには、
それぞれにあったスタイルを選ぶ必要があり、
そのスタイルの選択に関しては、
「個性と状況」を客観的に判断する必要があります。
2.遭難事故(不合格)を避けるスタイルとその種類
それでは、遭難事故(不合格)を避ける上で、あなたに最適なスタイルとは、どのようなものがあるのでしょうか。
まず、時間的条件や経済的条件を無視して、安全・確実な順に列挙していくと、以下のようになると思います。
予備校>通信講座>独学
それでは、時間的条件や経済的な条件を考慮にいれると、どのような順番になるでしょうか。
以下のように、さきほどとは反対の順番になるのではないでしょうか。
独学>通信講座>予備校
3.結論としてはどれがおすすめか
山岳登山と遭難事故を引き合いに出して、「安全性」と「時間的・経済的効率性」を比較考慮すると、
結論は、間違いなく安全性を重視した予備校を選ぶべきだと言うことになると思います。
私は独学というスタイルで合格しています。
ですから、ここで予備校に行くほうが良いと勧めているわけではありません。
ですが、あなたと「個性や状況」は同じではありません。
私の「個性や状況」については、プロフィールを見てもらうとよいと思いますが、要約すると、以下のようになります。
(状況)
6ヶ月弱試験準備期間を経て合格
実質的な勉強時間は、400時間程度
平日は1時間程度
週末(土・日)は6時間程度
通勤時間で毎日1時間程度
1人暮らしで、炊事・洗濯などもしていたため、それほど時間的な余裕はありませんでした。
通勤時間は車で往復1時間程度です。
(個性)
貿易実務や法律の知識はありませんでした。
「通関従業者研修」という税関の研修を受けました。
この研修で、通関に関することや関係法令は大まかに学ぶことができました。
この研修以外は全て独学で勉強していました。
理由は、ボリュームのある予備校や通信講座の講義を受ける余裕がないと判断していたからです。
私と似通っているならば、以下に紹介する勉強方法と教材を参考にしてみてください。
上記記事には、様々な状況にあわせた代替プランも用意してみましたので、ご覧ください。
さて、誰かの合格した時の状況や個性はあくまでも参考に過ぎません。
最も重要なのは、あなたの「個性と状況」です。
それを踏まえて、考えてみることが大切です。
「個性と状況」とは、
ある人の個性(経験や知識、勉強方法への順応性といった側面)や状況(時間的な側面など)といったことです。
ただ、ここで「個性」も併せて考えると複雑になるので、そこは「予備校」「通信講座」「独学」に関する別の記事を読んで判断してください。
ということで、ここでは専ら、「状況(特に時間的な側面)」に絞って検討していきます。
なぜなら、時間的な側面という状況次第で、どのようなスタイルで受験するかの選択をせまられることになる方が多いからです。
例えば、社会人で仕事をしながら予備校の講義を受けることを考えると、かなりのボリュームがあると感じるでしょう。
標準学習期間も6ヶ月~9ヶ月と長めに設定されています。
WEB通信型、DVD通信型の予備校であっても、仕事をしながら受講しきれるのかという疑問が出てきます。
私も、時間的に予備校は無理だと判断しました。
もし、あなたが予備校の講義を受講しきる余裕がない「状況」がであれば、
独学か通信講座の選択肢しかなくなってくるということになります。
試験まで6ヶ月を切っているとか、家事や育児の関係で、時間的に予備校は選択できる状況にないという方もおられると思います。
また、予備校の開講を待たずに学習を始めたいといった理由の方もおられます。
このようなことは全て、時間的な側面という状況によってスタイルを選択するように迫られる要因です。
4.個別性を考慮したスタイルの選択
結論からいうと、時間的な側面という状況により、
「予備校」か「独学・通信講座」かの2択になります。
ここで、また山岳登山を例に整理してみます。
ここでは、「個性と状況」を考慮して、登山でいうところの「シージ・スタイル」を選ぶのか、「アルパイン・スタイル」を選ぶのかについて考えてみます。
5.予備校(シージ・スタイル)
シージ・スタイルというのは、ベースキャンプを数箇所設置して、山岳ガイドも雇って、時間とお金をかけて、じわじわと山を上り詰めていく登山スタイルのことです。
エベレストなどは上述のシージ・スタイルで攻略するのが一般的と言われています。
シージとは「攻囲」の意味で、要塞などを包囲し、じわじわと攻撃していくことになぞらえて、そう表現するようです。
この方法は確実性は高いですが、時間とお金がかかります。
「シージスタイル」は、
「予備校の圧倒的なボリュームの講義を
それなりの受講料を支払って受講する方法」
と考えると分かりやすいです。
「ベースキャンプ=予備校」
「山岳ガイド=予備校の教師」
と考えてエベレスト登山を想像してみてください。
はっきり言って、時間とお金があるならば、安全性の観点から考えてこの方法が一番確実だと思うのではないでしょうか?
独学で何らかの試験に合格したことがない場合は、確立した勉強方法が身についていないということも考えられます。
また、今までの受験では、講義形式で学びを深めてきた方が多いと思います。
そんな方が、いきなり独学でテキストを読み込むことは、大きな負担になるかもしれません。
そうなってくると、予備校が最良の選択となってくるのではないでしょうか?
予備校教師の講義を受けて、分からない箇所があれば質問をすれば良いのです。
これまで学校で勉強してきたスタイルと変わりないやり方で合格に近づくことができると思います。
でも、事はそんなに単純ではありません。
先に述べた時間的な側面という状況に着目すると、
独学・通信講座(アルパインスタイル)が最適であると言う状況もあるのです。
6.独学・通信講座(アルパイン・スタイル)
アルパイン・スタイルというのは、
シージ・スタイルのように、あらかじめ設営されたベースキャンプや固定ロープを使わず、酸素ボンベといった装備にも極力頼らず、個人の能力に頼って登りきる登山スタイルのことです。
少数精鋭で、必要最小限の装備で挑むため、登山期間を短縮でき費用も抑えられ、悪天候や雪崩のリスクを最小限にできるメリットがあります。
その反面、遭難や高山病といった様々なリスクも伴うことになります。
エベレストなど8,000メートル級の山を登るのに、
アルプス(アルパイン)など最高標高が5,000メートルに満たない山と同じ要領で登ることからきた言葉のようです。
なぜ、私がこのアルパイン・スタイルに独学と通信講座を入れたかというと、
短期・低費用・少数精鋭
という特徴が似ているからです。
予備校というベースキャンプを経ずに、一気に自分のペースで勉強を進められます。
つまり、短期かつ低費用で合格を目指せます。
ただし、それ相応のリスクを伴うということも良く似ています。
どういうリスクを伴うかというと、3つほど考えられます。
1つ目としては、
いつ法律が改正されて施行されるかについての情報を取り違えば、その時点で失点につながるリスクがあるということです。
完全に独学というスタイルを貫く場合は、自分で情報収集をする必要が出てくるのですが、
テキストもいろいろあって、法改正などを情報発信していないものもあります。
そういうテキストを選択すると、法改正について自分で苦労して調べる必要が出てきます。
自分で法改正を調べるのは、非常にややこしい作業となります。
それに加えて、法改正が本試験の問題にどう影響するかを予測することは非常に難易度が高い作業と言えます。
2つ目としては、
計画立案や進捗管理は全て単独で行う必要があり、苦手な方にとっては非常に厄介な作業を強いられると言うことです。
この点に関して、予備校や通信講座は積極的に手助けしてくれるツールを持っている場合が多いと思いますが、
独学の場合は全て自分で管理する必要が出てきます。
受験する上でのテクニックやメンタル面での管理、直前に準備する物品などについても「計画」の範疇に入ると思いますが、それらを予備校や通信講座は率先して実施してくれると思いますが、独学は自分でする必要があります。
3つ目としては、
疑問点が浮かんでも、自分でなんとかしなければならなくなるということです。
予備校や通信講座ならば、直ぐに質問することができるのですが、独学の場合はそうもいきません。
テキストを読み込んで問題に多く当たるうちに解決していくことも多いのですが、ひとつのことで行き詰ると先に進めないという完璧主義的な傾向が強い方は、厳しい状況に陥る可能性もあります。
以上のようなことから、予備校に比べるとリスクが高いと言える「独学と通信講座」ですが、
時間的に余裕がなく予備校の講義を受講している暇がないという方は、視野に入れるて考える必要があります。
次に「少数精鋭」という点について考えてみます。
独学は少数精鋭という特徴があると述べましたが、違和感を感じる方もおられるかもしれません。
しかし、独学も実は少数精鋭のチームで頂上を目指しているのと同じだと思います。
なぜなら、独学と言っても、たった1人で勉強している訳ではないからです。
ネット上で合格者の意見を参考にしてみたり、誰かが執筆した参考書を読んだり、誰かが作った問題集を解いたりしていて、自然といろいろな人と力を合わせて勉強をしているのです。
通信講座も基本的には同じですが、質問ができたりする講師(山岳ガイド)がついてくる分、少し割高に感じるだけです。
通信講座は、法改正の情報や受験テクニック・計画立案・進捗管理などをしてくれるので、心強いと思います。
ただし、通信講座の内容面は予備校と比べてコンパクトにできています。
ボリュームのある完全講義形式で細かく教えてもらえる予備校でないと不安だという方にとっては、中途半端に感じるかもしれません。
さて、どのスタイルでいくか、しっかりとイメージはできたでしょうか。
次の記事では、予備校、通信講座、独学について詳しく比較検討してみます。
まずは、予備校から見て行きます。次に通信講座、独学と続きます。