通関士試験は、日本で唯一の貿易系の国家試験です。
貿易と言うと英語が必要だと思われがちですが、
ほとんど必要ないと言うことは、別の記事で書いています。
実際に必要となるのは、
貿易実務で使われる専門用語です。
今回は通関士試験の『インボイス「INVOICE(仕入書)」』を
ある程度読めるようになることを目的として
記事を書いています。
詳しく掘り下げた内容ではありませんので、ご了承ください。
目次
1.貿易実務で使われる専門用語
2.INVOICE(仕入書)を読む
3.まとめ
1.貿易実務で使われる専門用語
短期合格を目指す上で、
確実に合格を目指す上でも、
取り組まなければいけない優先課題が「通関実務」です。
この「通関実務」という科目に登場する
「貿易実務に関する専門用語」に早い段階から触れておくことが重要になってくると思います。
英語や法律よりも、
まずは通関実務試験で必要な専門用語についての知識を得るようにしましょう。
貿易業界で働いておられるなら、業務上必要な知識として、
知っておくべき常識と言えるかもしれません。
今回は「通関士試験のINVOICE(仕入書)」が読めることを目的として
記事を書いてみました。
2.INVOICE(仕入書)を読む
『インボイス「INVOICE(仕入書)」』は「送り状」と訳したりもします。
以下のような「商品の明細書」「代金の請求書」「納品書」を兼ねた書類です。
「通関実務」で重要な部分は下段(⑪~⑳)に集中しています。
上段(①~⑩)は、試験にはあまり関係ありません。
ちなみに信用状関係(⑧と⑨)は通関士試験には関係しませんので、無視して構いません。
それでは、詳しく見ていきたいと思います。
なお、特に重要な部分は太字にしています。まずは、そこを重点的に読んでみてください。(ちなみに⑫から太字が出現します。)
また、英単語も出てきますが、貿易業界人以外には通じない「専門用語」ですので、初めて見たという方は徐々に慣れていくようにしましょう。
①Seller(s)
「売り手(Seller)」のことで「輸出者」を指します。
貨物の輸出者の名称と住所が記載されています。
「AAA Co., Ltd.」というのが、社名です。
日本語訳すると「AAA株式会社」となります。
社名の下段にあるのは住所です。
「Co., Ltd.(Company Limited)」は株式会社のことです。
「Co., Ltd.」は、日本で使われることが多い表記方法です。
会社や国によっては、同じ「株式会社」でも表記方法が違っている場合があります。
イギリスでは、「Ltd.(Limited)」か「Plc(Public Limited Company)」が使用されます。
アメリカでは、「Inc.(Incorporated)」や「Corp.(Corporation)」
が使用されます。
「Limited」は有限責任(の会社)を意味します。
倒産した時の責任が制限されているということです。要は株式会社のことです。
「Incorporated」は法人企業を意味します。
「Corporation」は株式会社を意味します。
②Invoice No. and Date
この「INVOICEの番号と作成日」です。
作成者が任意で付与している管理番号です。
③Buyer(s)
「買い手(Buyer)」のことで「輸入者」を指します。
貨物の輸入者の名称と住所が記載されています。
「BBB Corp.」というのが、社名です。
日本語訳すると「BBB株式会社」となります。
社名の下段にあるのは住所です。
④Vessel Voy.No. On or About
「Vessel」は船を意味する単語です。
本船の名前を書くようになっています。
このINVOICEでは”Unicorn”という名前の本船となっています。
「Voy. No.」は航海番号です。
Voyage Numberの略です。
定期コンテナ船は同じ航路を往来しているので、
この航海番号を付けておかないと、ややこしいことになります。
「On or About」は出港予定日です。
天候など諸々の都合により、必ずしも「この日(on)」とは言い切れないので、このような「あいまい(about)」な表現となっています。
⑤From
「積込み港」を記載します。
「From」は「どの港から積込むか」ということです。
ちなみに「Via」は「経由」という意味です。
シンガポール経由とか上海経由とかを記載する場合もあります。
⑥To
「荷揚げ港」を記載します。
「To」は「どの港に着いて荷揚げするか」ということです。
⑦Country of Origin
「貨物の原産国」のことです。
⑧L/C No.
「信用状番号」のことです。
どうやって代金の支払いをするかという「決済条件(Payment Terms)」と関係します。
『信用状「L/C(Letter of Credit)」』による決済方法を選択した場合に、たいていの場合は、この信用状番号を記載することになります。
⑨Issuing Bank
「(信用状)発行銀行」のことです。
詳しく勉強されると分かると思いますが、
信用状決済では、代金の決済について、銀行が関係してくるようになります。
詳しいことについては、ここでは割愛いたします。
詳しく知りたければ、貿易実務の書籍などを読みましょう。
⑩Other Payment Terms
「その他の決済条件」のことです。
信用状決済以外にも、決済条件はいろいろと存在します。
電信送金(T/T)や普通送金(M/T)などです。
詳しいことについては、ここでは割愛いたします。
(通関士試験に出題されないからです)
詳しく知りたければ、貿易実務の書籍などを読みましょう。
(↑価格も手ごろで図が多くて分かりやすいですね。貿易ではどのような関係者がいるのか理解するのに役立ちます。初めて読むのにはちょうど良さそうです。L/Cの関係で嫌なことでもあったのか、銀行の方の人相が・・・。)
実務に即した知識を知りたい場合は以下の書籍がお勧めです。
ただし、高価でボリュームがあります。
(会社や図書館に置いてあるかもしれませんので、見てから必要を感じたら買いましょう)
(↑これを買っておけば間違いないような気がします。高いですけど。)
⑪Marks and Nos.
「貨物の記号・番号」のことです。
以下のように記載されているのが、記号と番号です。
NEW YORK
C/NO.1-100
MADE IN JAPAN
ちなみに「C/NO.1-100」が番号部分ですが、
「Carton Number.1-100」を表しています。
こう書いてあれば、
100箱(Carton)に1~100の番号をふってあるということです。
↓ここからが重要になってくる部分です
⑫Description of Goods
「貨物の詳細」のことです。
品名や貨物の特性などが記載されています。
特性としては、以下のようなことが書かれています。
「Prepared foodstuffs & others(調整済み食品とその他のもの)」
「(not decaffeinated)デカフェ(カフェイン除去済み)ではない)」
ちなみにDescription of Goods欄に出てくる品名(英語)は問題に添付されている「統計品目表」に日本語訳が載っていますので、「decaffeinated」といった難解英単語を覚える必要は全くありません。
⑬Quantity
「量」つまり「貨物の数量」のことです。
「kg」という単位が下に書かれているので、分かると思います。
⑭Unit price
「貨物の単価」のことです。
下線部に「per kg」と書かれていますが、
「kgあたり」という意味です。
このINVOICEでは「1kgあたり、US$10.00」となっています。
よく見かける表記方法として、
「US$10.00/kg」があります。
この「/(斜線)」が「per(あたり)」を表しています。
⑮Amount
「総計」のことです。
ここでは「品名ごとの合計金額」を表しています。
下線部に「Ex-works」と書かれていますが、
これは「工場渡し条件」のことです。
この「価格についての但し書き」が実務でも試験でも非常に重要となってきます。
このような「貿易条件」は、非常に重要です。
インコタームズと呼ばれるものは「国際貿易条件基準」として知っておくべき知識です。
Ex-works(EXW)やFOBやCIFがこのインコタームズと呼ばれるものです。
これについてもう少し詳しく、別記事で書いてみる予定です。
⑯Inland freight & other charges(Tokyo)
⑯は「国内運送費用とその他の費用(東京)」となります。
これは、この仕入書限定ですが、重要な部分なので抜き出してみました。
こういった「但し書き」付きで金額が付記されている場合は「加算要素」として問題に絡んできます。
つまり、これらの文言に関しては理解できないと問題が解けません。
「港までの国内運送費用(Inland freight)」と、
「その他の費用(other charges)」が
船に乗せるまでにかかっているということが別に記載されているのです。
この諸費用が何を意味するか理解していないと問題は解けません。
ですので、以下のような専門用語は覚える必要があります。
・Inland:内陸、国内
・freight:運送費用、運賃
・other charges: その他の料金、費用
(複数形がついているので「その他の諸費用」ですね)
問題の冒頭で、費用について日本語訳をつけて説明してくれている場合もありますが、上記の専門用語については日本語訳や説明がなかった本試験もあります。
問題をたくさん解いて慣れておくしかありません。
⑰Freight & insurance(Tokyo~New York)
⑰に「運賃と保険料(東京からニューヨーク)」とあります。
⑯と同様の理由でこの文言の理解ができなければ、問題が解けません。
freight:海上運賃を指します
insurance:海上保険料を指します
⑱Total:CIF NEW YORK
⑱は「運賃保険料込み条件(CIF)での総額」を意味しています。
上述のインコタームズと呼ばれる貿易条件であるCIFが登場しました。
このCIF価格とは「運賃保険料込み条件」と呼ばれるもので、
「貨物が輸入地に到着するまでの海上運賃(freight)と海上保険料(insurance)などを売り手が負担するというものです。
このINVOICEの場合は、
⑮と⑯と⑰の価格を合計(total)するとCIFとなります。
また、⑮のEX-worksの合計に⑯の費用を足せば「FOB」という貿易条件の額となります。
FOB価格とは「本船渡し条件」と呼ばれるもので、
「貨物が輸出港の本船の船上に置かれたときに、貨物の危険負担※と費用負担が売り手から買い手に移るものです。
輸出通関費用と本船に乗せるまでの費用は売り手が負担します。
それ以外は、買い手が負担します。」
※「危険負担」とは、
「貨物が沈んだり、壊れたりした時に、輸出者と輸入者のどちらが、どの時点で責任をもつか」ということです。
輸出申告であれば、FOB価格が解答するために必要になってきます。
このINVOICEの場合は単純に足し引きをすれば、
EXW(EX-works)、
FOB
CIF
といった貿易条件の価格が求められます。
しかし、試験ではそれほど単純に求められる問題ばかりではありません。
「FOB価格の10%を上乗せした価格がCIF価格となっている状態」からFOB価格を求めさせられたり、
輸入申告では「CIF」を算定した上で「算入要素」を加算する作業が求められます。
この「算入要素」というものには様々な種類があります。
例えば「輸出国での保管料」「商標権のロイヤルティ(使用料)」などです。
加算しなくてよい要素も付け加えてあったりするので、
見分ける目を早い段階から養えるようにしておかなければならないのです。
こういったことから、後手にまわりがちな「通関実務」の試験勉強は早めにとりかかる必要があるのです。
⑲貨物の総数について
「Total」は総数ですね。
「N/W」は「Net weight」のことです。
「net」とは「正味の」という意味です。
箱や木枠などの梱包のための重量を除いた商品の重量のことです。
「G/W」は「Gross weight」のことです。
「gross」とは「総体の」とか「風袋(ふうたい)共の」という意味です。
風袋(ふうたい)とは「はかりで物を量る時の、その品物の容器・袋・箱・上包みなど」のことです。
⑳Signature
「Signature」は「署名」のことです。
この部分は、試験には関係しません。
この欄には、輸出者の社名と責任者のサインが入ります。
3.まとめ
受験して合格をするのであれば、このややこしい「通関実務」を避けては通れません。
⑱前後を読んでいて、
頭痛がしてきた場合、
それは自然なことだと思います。
早めの早めの「通関実務対策」の必要性を体感されているのだと思います。
インコタームズを知っていたり、
INVOICEを見慣れているような方は、
問題も解かずに「できるだろう」と判断してしまい
対策が遅れがちになる場合があります。
実務的な知識がある人ほど「通関実務」を軽視して法律科目に注力してしまって、試験対策が間に合わなくなることがあるので、注意が必要です。
今回でINVOICEを読む際のストレスは少しは減ったと思いますが、
インコタームズについて慣れれば、もっとストレスが軽減されると思います。
後は問題集をたくさん解いて「通関実務」の罠を見分ける目を養うのみです。
見極める目さえ養えれば、6割の合格ラインには必ず到達できるはずです。
途中で登場するFOBやCIFといった貿易専門用語に触れるのが初めての方は、
以下の記事を読んでみると理解しやすいかもしれません。