みなさんは、
艀をご存知ですか?
「はしけ」と読みます。
下の画像は私が思う典型的な艀(はしけ)ではありません。
典型的な艀(はしけ)の画像がなかったので、
見たことがなければ、ウィキペディア(艀)で調べてみてください。
なぜ、この艀を取り上げているかと言うと、
通関士試験に必出だからとか言う理由ではありません。
艀を知らなくても問題は解けます。
ただ、艀のような、あまり目にしない物が何かを知って参考書を読むと、
理解したり、記憶しやすくなるかもしれないと思い取り上げてみました。
特に学生の方で通関士試験の勉強をされている方は、参考にしていただける話かもしれません。
通関士試験のテキストや問題がとっつきにくく感じる一番の理由は、
法律と貿易専門用語があるからだと思います。
法律は参考書を読んで、問題を解いていると慣れてきます。
FOB価格とかCIF価格といった貿易専門用語も完全に理解できなくても、
参考書をある程度読んで、問題に当たればどうということはないかもしれません。
ただ、
もし勉強にある程度馴染んできても、
なんだか「しっくり理解できない」という場合は、
実際に港湾施設を見たことがないからかもしれません。
海の近くに出かけると、嫌でも目に入ってくるのが、港湾施設の存在だと思います。
特に都市部ではその存在はかなり異様というか、巨大なものです。
観光でも東京や大阪、神戸を訪れると自然に目に飛びこんでくると思います。
しかし、興味がなければ見落としがちというか、
海を見ていても、意識の外にあるのが港湾施設だったりします。
また、いろいろな種類の船舶が航行している姿を見かけますが、
興味がなければ、全てがただの「船」です。
そんな中でも一際目につかない「忍び」のような存在が、艀(はしけ)という船です。
貨物を載せていない艀が停泊していても、まったく気づかないと思います。
実は、この艀は、かなり重要な船舶です。
艀は平型の運搬用の船舶のことですが、
この艀がなければ船舶での輸送はやっていけないからです。
河川や港湾などで、陸と海をつなぐ要となっているのがこの艀なのです。
コンテナが運用され始める1960年代頃までは、この艀が主役だったのです。
大型の貨物船から大量の貨物を工場などに運ぶためには、
港にいったん陸揚げしてから、トラックで運ぶなどという方法もありますが、
重量があったり、巨大な貨物はそうもいきません。
河川や海に面した場所にある工場でも、
貨物船が大きなものになると、着岸できない場合があります。
狭すぎて航行できないとか、座礁してしまうなどの理由です。
そういった場合に、沖合いや港で艀に貨物を積み替えて、
何回かに分けて輸送するというのが従来からあるやり方です。
ですから、貿易条件の中でもFAS(船側渡し条件)として、艀のために設けられていると言っても良いような条件があります。
そして、今でも在来船との橋渡しをしているのが、この艀です。
在来船とは、コンテナに入らないような大型の貨物(鋼材、重量物、プラントなど)を運ぶクレーン設備を持つ船のことです。
在来船が船積みできるようにするためには、
貨物を置く場所は、
クレーンが届く
埠頭(岸壁)や
艀(はしけ)でなければなりません。
1960年代ごろから、コンテナが多用されるようになり、
艀が活躍する機会は減少しています。
コンテナに入るものは、コンテナで運ぶ方が便利になったからです。
コンテナであれば、トレーラーでひっぱったり、
鉄道に載せかえたりして内陸部まで輸送して、工場の軒先に着けることができます。
艀ではそのようなことができないことは言うまでもありません。
しかし、以下の画像のようにコンテナの大きさは一定です。
コンテナの高さや幅がばらばらだと、
コンテナ船に整然と積めるはずがありません。
無理やり積もうとすると荷崩れするか、
気の遠くなるような時間と労力を要するでしょう。
このようなことから、
コンテナの規格は一定でないと話にならないのです。
規格が一定ということは、
載せられる貨物の大きさや重量には、
限界があるということです。
では、このコンテナよりも大きな貨物はどうするのか?
それは、在来(もともとあった)のやり方で在来(もともとあった)の船に積込むということです。
貨物を岸壁や艀に置いて、
クレーンを装備した在来船に直接船積みします。
だから艀は今でも重要な役割を果たしています。
さて、ここまでが艀の話ですが、
コンテナの場合はどのように積み卸しするのかについても書いてみます。
コンテナの場合だと典型的な「クレーン」を使う港もありますが、
たいていは「ガントリー・クレーン」という大型の橋脚型クレーンを使用します。
これにより、短時間で効率的に積み・卸しが可能になります。
外観から「きりん」と呼ばれることもあります。
お台場から東京湾を眺めると見えますよね。神戸でも無数の「きりん」を見ることができます。
また、ガントリークレーンから降ろした後には、
コンテナーを運搬するための
「ストラドル・キャリア」とか「トップ・リフター」といった重機が必要になります。
FOB価格で「船積み費用」というのは、これらのクレーンやリフターなどに掛かる費用の一部と考えます。
こういったクレーンや重機が活躍しているのが、
コンテナ・ヤードという場所です。
ちなみに、東京港のコンテナヤードの荷役風景を見ることができる施設があります。
神戸港の歴史やコンテナヤードのジオラマが見ることができる施設もあります。
しかし、ジオラマではなく、やはり本物を見たいですよね。
神戸は実際にコンテナヤードを見ようとすると、
自動車でポートアイランドなどに行く必要があると思います。
しかも、東京ほど近くで見ることができないと思います。
(近くでコンテナ・ヤードを見学できる方法をご存知の方は教えていただければ幸いです)
神戸で実際にコンテナヤードを近くで見たい場合は、本気で「見学」するしかないようです。
商船港運さんや、上組さんにお願いすると見せてもらえるようです。
学生さんで、現場を見たことがないという方は、勉強の息抜きや社会見学、就職活動の一環として見に行かれてはいかがでしょうか?
具体的にイメージがし易くなって、勉強が捗るかもしれませんね。
さて、神戸海洋博物館のジオラマとドライブでは物足りないという方は、以下のプランがおすすめです。
神戸にはコンテナヤードの近くに、
「UCCコーヒー博物館」があります。
ここは本当におすすめです。
みなさんは、コーヒーがどのように世界に拡がっていったかご存知ですか?
イスタンブールやベネチアと言った名だたる海運交易都市が関係していて、
海運業の発展と深い関係があります。
スターバックス・ロースタリー東京も魅力的ですが、
待ち時間が・・・。という方は、
神戸に行って「UCCコーヒー博物館」とコンテナ・ヤード見学ツアーをおススメします。
コーヒー文化を通して海外交易について思いを馳せつつ、
異国情緒あるれる港街神戸と近代的なコンテナ・ヤードのコンビネーションを
コーヒーの香りとともに味わいましょう。
刺激的で濃密な時間を過ごせると思います。
(確実に2泊3日はかかるコースですが・・・。)
スタディ・ツアーとして、
コンテナヤード見学に行ってみてはいかかでしょうか?
イメージができたら、FOBとCIFを復習してはいかがでしょう。