通関士試験で必要な貿易専門用語について書いてみたいと思います。
これが理解できていないと「通関実務」という実務科目が解けません。
絶対に必要な知識と言えます。
今回は、インコタームズの概要について書いてみます。
冒頭部分は「インコタームズ」がどのようなものか
知っておく程度で構いません。
時間がないと言う方は、
「2.通関士試験で問われるもの」 を先に読んでいただいても構いません。
次回は、通関士試験で最も重要とも言える、
インコタームズのFOBとCIFについて説明していきます。
目次
1.インコタームズとは
国際貿易条件基準の通称をインコタームズと言います。
International Commercial Termsの略称です。
言葉も文化も違う国々と貿易取引をするときには、
売り手と買い手の間で、どのような条件で取引をするか、
双方の解釈に相違がないように、きっちりと決めておかなければなりません。
もし、あらかじめ決めておかなければ、
何かあった時に非常に面倒なことになってしまうからです。
例えば、
「貨物の引渡し場所はどこにするのか」
「輸送はどちらが手配して、
どこまでの費用をどちらが支払うのか」
「通関手続きはどちらがするのか」
「保険はどちらが手配するのか」
「もし貨物が海に沈んでしまったり、破損してしまったらどうするのか」
というようなことについて、
先に条件を決めておかなければ、
もめること間違いなしです。
もめるどころか、仕事が先に進まないのではないでしょうか?
「通関手続きはどちらがするのか」
「荷降ろしの作業はどちらが行うのか」
といったことを
メールや電話で確認する必要が毎回出てくるかもしれません。
そして、ひとたびトラブルが起これば、水掛け論になるのは必至です。
このような状態では、
常に国際的な紛争が繰り返されて、貿易の振興を妨げることになります。
そこで、貿易が公正かつ円滑に促進されていくように、
①費用負担の範囲
②危険負担の範囲
についての
「国際的な解釈基準」を定めて、
事前に責任分担について、決めておくようにしたのです。
①費用負担の範囲とは、
運賃や保険料の費用について、どちらが、どこまでを支払うかの責任分担範囲のことです。
②危険負担の範囲とは、
上記のトラブル例のような、
貨物が沈んだ場合や破損した場合に
「誰がいつまで責任を負うのか」についての責任分担範囲のことです。
「売り手(輸出者)がどこまでリスクを負うか」についての範囲を定めているとも言えます。
このような貿易条件に関する国際的な解釈基準を定めているのが、
パリに本部を置く国際商業会議所(ICC)です。
ICCとはInternational Chamber of Commerceのことです。
このICCが定めている国際的な解釈基準が、
冒頭で述べた「国際貿易条件基準(通称インコタームズ)」です。
このインコタームズを知らずしては、貿易ができないと言っても過言ではありません。
ちなみに、インコタームズは10年ごとに改定されています。
2010年度から2018年度までの通関士試験では、インコタームズ2010年度版の貿易条件で出題されています。
実際の貿易は当事者間で合意があれば、
インコタームズ2000年度版の貿易条件で契約を締結することも可能です。
詳細を学びたい場合は、こちらの本が詳しくて良いかもしれません。
(会社に置いてある場合は見せてもらいましょう)
2.通関士試験で問われるもの
インコタームズの2010年度版は11種類あります。
通関士試験の問題を過去10年間(2009年~2018年)に遡って見ると、
11種類のうち8種類が出題されています。
(ちなみに2009年の試験はインコタームズ2010年度版と定義が変わらない貿易条件が出題されているので、カウントに入れています)
それでは、試験対策として全11種類を完全理解して頭に叩き込んでおく必要があるのでしょうか?
インコタームズは、貿易業界でプロとして仕事をする上では「常識」として知っておくべきことは上述の内容を読めば言うまでもないことですが、
通関士試験では今のところ、全11種類を完全理解する必要はありません。
重要なインコタームズでも、通関士試験に合格することだけを考えると、
覚えなくても良い領域があるということです。
特に短期合格を目指す上では、
この「覚えなくても良い領域」を知ることは重要となってくるでしょう。
その辺は、お手元にある有名なテキストをご覧になっても分かると思います。
私が見た有名なテキストの3冊(仮にA、B、Cとします)を見比べると、
Aに書かれているものは、3種類(FOB、CIF、CFR)
BとCに書かれているものは、たった2種類(FOB、CIF)だけでした。
ちなみに、Aは「網羅的なテキスト」と言われておりネット上では「推薦図書」のような扱いのものです(某公益財団法人のものではありません)。
その理由として考えられるのは、
「参考書を執筆する上で、2種類(FOB、CIF)について触れておかなければ話にならない」ということです。
つまり、2種類(FOB、CIF)に関しては、理解しておかなければ問題を解くことができないということです。
しかし、通関士試験では、過去10年間で11種類のうち8種類が出題されていますが、
参考書で触れていないものがあるのはどういうことでしょうか?
これは、2種類(FOB、CIF)について理解しておけば、
他のインコタームズについては
「問題を解きながら理解していくことが可能」
もしくは
「問題を解きながら類推解釈が可能」だということです。
そして、さらに言うと、
上述の、①費用負担の範囲については、理解しておく必要がありますが、
②危険負担の範囲については、今のところ(2019年9月現在)は知らなくても良いと言えます。
ちなみに、上述のAの参考書には「インコタームズ」という言葉すら載っていません。
FOBとCIFの費用負担についてのみ解説しています。
(CFRについても費用負担の部分だけの説明に留まります)
以上のようなことを踏まえながら、
次回は、通関士試験で最も重要とも言える、
インコタームズのFOBとCIFについて説明していきます。