通関士試験の「難易度」については、何を基準にしていますか?
「合格率が低いから」
「通関実務という科目があるから」
「法律科目があるから」
難易度が高いと判断されていますか?
実は、以下のようにデータを見て、考察をすると実は「科目免除」が難易度を上げているのではないかと推測できると思います。
なお、2019年度の通関士試験の合格発表がありました。
今年から科目免除に関して詳細なデータが発表されるようになっております。
以下の記事は、当記事の内容を2019年度版に改定した内容となっております。
目次
科目免除が学習意欲を削ぐ?
科目免除と合格率に関する考察?
情報処理能力が求められる
科目免除に疑問を感じた方がやるべき1つの事
通関士試験の申込者数と受験者数
おわりに
科目免除が学習意欲を削ぐ?
ちなみに、この科目免除に関する記事は、これから通関士試験を受験される方で、「5年以内を目途に合格を目指す方」や「今後通関業務と関わりがない方」には必要ない知識となります。
しかも、今回の記事はあくまでも私見であり、投稿するか非常に迷いましたが、特に通関業務をされている方の場合、
科目免除が学習意欲を削ぐ原因になっていると思い、敢えて投稿しました。
全てが私見に基づきますが、結論からいいますと、科目免除があるおかげで合格率が低く、受験回避(出願しても受験しない)も多いと考えます。
通関士試験の難易度を上げている要因は、科目免除かもしれません。
合格率の内訳や当日試験会場に現れない受験者数の多さを見ると、科目免除に対する考えが少し変わるかもしれません。
科目免除と合格率に関する考察
以下に平成30年度のデータを用いて科目免除と合格率の関係について考察してみました。
ちなみに最新の令和元年度(2019年度)のデータは以下の税関のホームページより確認できます。
平成30年度は、6,218名が受験して905名の方が合格しています。
内訳は以下の通りです。
1科目免除の受験者数は607名で、合格者数は135名。合格率は22.2%です。
2科目免除の受験者数は130名で、合格者数は88名。合格率67.7%です。
全3科目受験者数は5,481名で合格者数は682名。合格率は12.4%となります。
ご自分で確められる方は、以下の税関ホームページをご参照ください。
このデータを見て、みなさんはどのように分析されますか。
「1科目免除されても、合格率は 22.2 %と低いので難易度の高い資格だ」
「2科目免除されると途端に難易度が下がり、70%弱が合格できるようになる」
「1科目免除で最難関の「通関実務」が免除されても 22.2%程度の合格率ということは、「関税法等」が難易度を上げている原因だろうか?」
私は、この上記の思考過程こそが通関士試験の合格率が低く難易度が高い一因であると考えています。
以下のように考えることができると思うからです。
2科目免除で「通関業法」のみを受験した方の合格率は67.7%ですが、これは、やや「低い合格率」だと本来は捉えるべきだと私は考えます。
なぜそのように考えるかと言うと、この「通関業法」という科目は、他の科目と比較して圧倒的にボリュームが少なく、とにかく暗記して過去問を解いていれば、6割は確実に取ることができるからです。
2科目免除の対象者は15年の実務経験がある上に、関係法規に触れつつ、勉強を継続していたはずなのですが、67.7%という数字はかなり低い合格率だと私は思います。
普通に考えると、単純に勉強していなかっただけとは考えにくく、
①正しい方法で「試験対策」ができていない
②ケアレスミスが多い
以上の2点ぐらいしか考えられません。
すでに勉強に取り組まれている方で、問題集を解いたり、過去問を解いた経験がある方は頷かれる方もおられるのではないでしょうか。
続いて、1科目免除の合格率を見ていきます。
1科目免除で、「関税法等」と「通関業法」の2科目だけ受験された方の合格率は 22.2 % になります。これに関しては「低すぎる合格率」だと私は考えます。
なぜそのように考えるかと言うと、最難関である「通関実務」を免除されている上に、5年の通関実務経験を通じて関係法規に触れつつ勉強を継続していたはずだと考えるからです。
これも単純に勉強していなかったのでしょうか?
たしかに「関税法等」は「通関業法」とは比較にならないほどのボリュームがありますが、試験対策期間として5年の歳月を費やしても合格基準である6割の得点ができないことがあるのでしょうか?
理由としては、2科目免除と同じく、
①正しい方法で「試験対策」ができていない
②ケアレスミスが多い
ぐらいしか考えにくいと思います。
ただ、科目免除を考慮に入れて考えると、
③ 実務経験を15年積めば、2科目免除が受けられると思い、ほとんど勉強をしていない
④15年を経て科目免除で通関士合格を目指す姿勢を容認している状況がある
というような要因も入ってくるのではないでしょうか?
③と④は推測の域をでませんが、この要因抜きで考えにくい結果だと考えます。
もし、③や④の理由で受験勉強もせず15年間実務に専念し、資格手当は必要ないという方が大半を占めているのなら、この低い合格率は納得できます。
情報処理能力が求められる
私が科目免除について知ることになったのは、ある方が私に教えてくれたからでした。その方は、2回ぐらい不合格になってからは科目免除で合格を目指すことに決めていたそうです。ちなみに15年かけて合格されたそうです。
こういった情報は、1回目の受験者には「そういうこともあるのか」程度の情報で済みますが、
2回、3回と受験で失敗し続けていると科目免除を頼るようになり、学習意欲をそいでしまう可能性を持っているのではないかと思います。
科目免除の話をすると「おかしな国家資格だ」と言われる方が何人もおられます。
通関士制度が導入された歴史を加味して考える必要があるが、変えるべきところは変えるべきだと言っている人もいました。
実務経験5年で実務科目である「通関実務」が免除になるのは納得できますが、
実務経験15年で「関税法等」も免状というのは「法令順守」よりも「実務経験」の方が大切だと言っているようにも感じます。
しかし、今は目の前にある資格試験を短期速攻で合格してしまうことに集中すべきです。こんな資格試験であるからこそ、雑念に囚われずさっさとパスしてしまおうというように考えるべきではないでしょうか?
もちろん、情報をどのように分析して、どのように処理していくのかは自分次第になってくるとは思います。
今の自分にとって最も優先度の高い情報は何なのか見極めて、重要視すべきでない科目免除などの情報は不要情報とみなして処理していく姿勢も大切だと思います。
難易度が上がるのは、科目免除を受けられるから勉強しなくて良いと思う人がいるからかもしれません。
科目免除に疑問を感じた方がやるべき1つの事
科目免除などの情報は不要情報とみなして処理する
この一言に尽きます。
周囲の目を気にするとしたら、重要なのは、
日頃から熱心に法解釈や運用をされている税関職員の目にあなたがどのように映るかです。
同僚・後輩・上司の目に、きっちりと短期間で合格したあなたがどのように映るかです。
全科目(3科目)受験で合格したとなると、情報分析・情報処理能力が高いと評価されて然るべきだと思います。
この辺のことを頭の片隅に置いて勉強に取り組むだけです。
なお、通関士試験は、6ヶ月程度効率よく勉強ができれば合格が可能と言われています。
そうは言っても、仕事をしながら合格するのは難しい資格ですので、健康管理には十分気をつけて無理をしない程度に勉強を積み重ねていく必要があるので、社内の協力体制も重要だと思います。
また、通関士試験について正確かつ最新の情報を仕入れて、どのぐらいの勉強を、どのようにすればよいのかを把握して、実行に移せる時間があるのかということも重要だとは思います。
さて、
さらに、上記の私の考察と関連性があると思われる興味深い謎の数字がありますので以下、ご覧ください。
通関士試験の申込者数と受験者数
先ほどから参考資料としている平成30年度のデータですが、
受験申込者数は8,491名ですが、実際に試験を受けられた方は 6,218名しかいません。
1年に1回しかない国家資格で、約3,000円と受験手数料がやたらと安いのが気になるところですが、
2,273名の方々はどこへ行ってしまったのでしょうか。
業務の都合や病気、冠婚葬祭が理由でこれだけ多くの方が当日試験会場に現れない事などあるのでしょうか?
この数字の理由に関しても、推測の域を出ませんが、
申し込みだけして、十分な準備をせずに直前で諦めてしまっているのではないかと思えてなりません。
(試験会場が少ないので、遠距離受験で旅費とか宿泊費用が捻出できず、あきらめるなどの理由もあるのでしょうか?)
合格レベルに達しているのに、情報をネガティブに受け止めて失敗を恐れて諦めてしまうのは残念な気がします。
しっかりとした受験勉強をしているのに、体調面やメンタル面での準備が出来ていなかったということは不幸にしてありえます。
そういうことは来年、しっかりと対策をすればよいだけです。
しかし、受験勉強もせずに諦めてしまうということに対しての対策を打つことはできるでしょうか?
それは、統計を過大評価せず、諦めずに正しい効率的な受験勉強を継続できる方法を探すことかもしれません。
おわりに
みなさんは科目免除や合格率などについてどのように考えられますか?
通関士試験は難易度が高いと思われますか?
本来は、統計や周囲の状況に流されず、きっちりと自分に合った勉強方法で臨めば必ずや合格を勝ち取ることが可能だと思います。
もしそうではなく、科目免除や合格率などの情報を手にとって、それを都合の良い材料のように思い始めていたとしたら、かなり苦しい状況になってきていると考えたほうがいいかもしれません。
1年目にはあったフレッシュなやる気を失い、業務で覚えなければならないことも増えて身動きがとれなくなってしまっている状況かもしれません。
そんな時に、無理をしてしまうよりも、
5年の実務経験で「通関実務」の科目免除を視野に入れるのは良いと思いますが、それまで「関税法等」の知識を錆び付かせないように試験対策だけでも継続しておく必要があると思います。
新人や学生の方は、
いろいろな情報に惑わされず、諦めずに早めにとりかかれば大丈夫です。
余計な情報は頭の外に置いて、効率の良い、正しい学習方法を身につけて短期合格目指してがんばりましょう!
なお、以下の記事は、私が科目免除について財務省に問合せをした結果について書いた記事です。