今回は、教材の特徴と整合性について考えてみました。
冒頭の「 1.ガイドブックでは困らないが・・・ 」は小休憩といったところです。
軽く読み流してみてください。
合格したらイタリア旅行に行こう!と考えていた方は参考になるかもしれません。
目次
1.ガイドブックでは困らないが・・・
2.通関士試験の教材では困る例
3.網羅的・包括的な教材
4.限定的・集約的な教材
5.まとめ
6.「ローマ」と「一夜城」
1.ガイドブックでは困らないが・・・
みなさんはイタリアのローマに行かれたことはありますか?
旅行に行く際にガイドブックは重要ですよね。旅行の際の参考書と言えますよね。これを例に少し考えてみたいと思います。
この2冊は同じ「ローマ」でも全然違う観点から書かれていますね。
イタリア旅行でローマと言えば、バチカン市国がたいてい組み込まれています。
この写真はサンピエトロ大聖堂とサンピエトロ広場です。とても有名ですね。
ちなみに下の写真はサンピエトロ大聖堂からサンピエトロ広場を見下ろしたものです。
上の写真の中央奥にサンタンジェロ城が見えます。ここもイタリア・ローマ観光では外せない有名なスポットです。
このサンピエトロ大聖堂とサンタンジェロ城は城壁でつながっていて、ローマ教皇が城壁をつたって逃亡する秘密のルートがあるということは有名な話です。映画「天使と悪魔」にも登場します。
グーグルマップで上から見てみると位置関係が分かりやすいかもしれません。
このように、ローマ観光の重要ポイントを説明するときに、
ある一連のつながりを持った説明(ガイド)ができると思います。
例えば、
バチカン市国→サンピエトロ大聖堂→サンピエトロ広場→サンタンジェロ城という風に、
上述のようなストーリーの中で一連の観光スポットを説明(ガイド)できると思います。
それとは別に、
バチカン市国について集中的に攻略!
(サンピエトロ大聖堂、サンピエトロ寺院、バチカン美術館、システィーナ礼拝堂などなど)
ローマ市街について集中的に攻略!
(サンタンジェロ城、パンテオン、コロッセオ、トレビの泉、スペイン広場などなど)
といったように説明(ガイド)していく方法もあると思います。
観光ガイドブックによってイタリア・ローマ(バチカン市国)の説明の仕方が異なるように、通関士試験の教材もこのように説明の方法が異なることがあります。
観光ガイドブックを何冊か買って、説明の仕方が違うからと言って、あまり困ることはないのですが、通関士試験の参考書だった場合は困ることが出てくるかもしれません。
2.通関士試験の教材では困る例
例えば、
保税地域の種類がいろいろあって覚えなければならない場合などが良い例です。
保税蔵置場、保税工場、保税展示場、総合保税地域、指定保税地域があります。
この保税地域について、
例えば教材Aの場合は、
保税地域ごとに詳細に説明し、試験によく出るかどうかは関係なく、全てのことを書いてあります。
例えば保税蔵置場に関しては、試験の頻出項目かそうでないかは別として、
機能から許可の期間、許可の要件などなど、全ての項目を網羅して記述してあります。
ところが、教材Bの場合は、
保税地域ごとに特徴を表にまとめて簡単に説明してあります。
簡略化して、一目で各保税地域の違いが分かるようにしてあります。
しかも、テストに出るキーワードを抜き出して説明を加えてあります。
例えば保税蔵置場に関しての試験頻出事項として
「長期蔵置等のための手続き」がありますが、
これは別に抜き出してまとめてあります。
具体的には、
保税蔵置場の「蔵入承認申請」については、
保税工場または総合保税地域の「移入承認申請」「総保入承認申請」と比較して「保税地域の種類」とは別の表にまとめられています。
このように教材によって特徴があります。これらを以下に比較してみました。
網羅的・包括的な教材
まずは、教材Aのような詳しく説明を加えていくという特徴を持つものについて考えてみましょう。
網羅的・包括的な教材といえるAの教材は、一連の流れを把握したい初学者には向いているかもしれません。
また、分からないことが出てきた時に辞書がわりに使うことも可能です。
ただし、どこが試験頻出なのかを把握したりするのは難しいでしょう。
また、要点をまとめたものを何度も見直して知識を定着させたい人にとっては大変見返し辛く厳しい「凶材」となります。ちなみに「地球の歩き方」は関係ありません。
インデックスを付けたり、分かり易くまとめた付箋を貼るといった閲覧性を高めることができなければ、復習も試験直前の見直しも短時間では厳しいでしょう。
インデックスの付箋と中にある追加の付箋で膨らんだ参考書を試験場で見かけることがあります。
自分なりにカスタマイズした参考書を作る利点はいろいろあります。
作ってしまえば、復習や試験前の見直しで自分にとって一番便利なものができるはずです。「作る過程」が記憶の強化に繋がることもあります。
また、自分がしてきた努力を実際に目で見れるので、膨らんだ参考書を見れば試験前に失いかけていた自信を取り戻せるという効果もあると思います。
ただし、膨らんだ参考書を作るために要する時間はすべて自分自身が創出しなければなりません。
では、時間のない人はどのようにしたら良いでしょうか?
別の要点をまとめた参考書を買えば解決するのでしょうか。
実はそこで問題になるのが「整合性」です。
例えばAの参考書を使っていて、試験対策用にBの参考書を買ったとして考えてみてください。
今まで使ってきたAの参考書とは、内容が違うため違和感を覚えるのではないでしょうか。これに戸惑うことなく順応できればいいですが、そうでなく混乱してしまった場合は、失点につながって、時間の無駄以上の損失となるかもしれません。
これが教材の整合性のなさが招くロスです。
ただし、網羅的な参考書でも「辞書レベル」に達しているものは、
「辞書」として使えます。以下のような教材が「辞書」に当たります。
限定的・集約的な教材
それでは、教材Bについて考えてみましょう。
試験頻出事項を優先した要点のまとめ方をしています。
補足説明がなければ、これだけ見ても理解できない初学者の方もおられるかもしれません。
こういった参考書は、予備校・通信講座が出版していることが多いのではないでしょうか。
予備校や通信講座は、DVDやオンラインの講義がメインになるので、参考書は教材Bのように、コンパクトにまとまっている傾向にあるでしょう。
DVDやオンラインの講義で補足されていれば、理解できないということはないでしょう。
一度理解ができていれば、こういう参考書は復習や試験前の見直しに繰り返し使うのに適しています。
試験前の最終チェックで「最頻出」事項をきちんと記憶できているか短時間で確認ができます。怪しいところがあれば試験直前の短時間で頭に入れてしまうこともできます。
まとめ
こう見てみると網羅的・包括的な教材Aは初学者にもやさしく書かれていて、要点をまとめたり、閲覧性を高める能力がある方にとっては1冊で終わるバイブルと言っていいでしょう。ただし、そうでない方にとっては、この教材に囚われると、「道に迷って」「何年もかかって合格する」ことになるかもしれません。
限定的・集約的な教材Bは、補足なしでは理解し辛い点もありますが、出版元が予備校や通信講座とつながっていれば、理解できなかった場合も救いを求める先があります。
時間があまり取れない方でも、試験の頻出項目を分かり易くまとめてあり、合格により近づける範囲だけを優先的に学習することも可能です。
また、ほとんど試験対策をする時間がなかったという方でも、
教材Bのような限定的・集約的な教材で、ぎりぎり合格ラインに到達できる可能性もあるでしょう。
仮に合格できなかったとしても、
短期間で集中的に試験に出る範囲だけでも押さえることが出来きれば、
それは次の年に受験する際に大きな遺産として残ります。
「レガシー(遺産)効果」というものです。
以上のようなことから、独学で時間に十分な余裕があって、まとめたり整理したりするのが得意な方はAのような詳しいタイプの教材をおすすめできます。
むしろそちらが性に合っているという方もおられると思います。
しかし、試験対策に十分な時間も割けず、まとめるのが苦手であるとか、まとめる時間もないという方は、Bのような要点を衝いた参考書をおすすめします。
「ローマ」と「一夜城」
「ローマは一日にして成らず」といいますので、こつこつと基礎から固めていくのは王道中の王道ですが、
「一夜城を築いて城を落とす」ことも不可能ではありません。
仮にただ一夜城ができただけであっても、翌年の合格に向けての前哨基地として有利に働くことは間違いありません。レガシー(遺産)として残る記憶は主要得点源となる項目であって欲しいですよね。
ローマ周辺の地図を埋め込んでみました。観光ガイドやタクシー運転手になろうと思えば有名なところは絶対に押さえないといけません。
みなさんならどこから手をつけていきますか?
要所のバチカン市国だけに絞ってみっちり勉強してから、
次にコロッセオ周辺の知識という風に、各個撃破していきますか?
それとも主要な部分(バチカン市国・サンタンジェロ城、コロッセオ、スペイン広場など)を先にとりあえず押さえてから掘り下げますか?
東京であれば、スカイツリーと浅草周辺をみっちり頭に叩き込んでから、次に東京駅・皇居周辺や銀座界隈をみっちり勉強するのか、
とりあえず、スカイツリー、浅草寺、東京タワー、東京駅、皇居、歌舞伎座などの有名スポットを押さえていくのか
という感じでしょうか。
向き不向きはあれ、「短期合格」を目指すなら、どちらの成功率が高いと考えますか?
「善は急げ」「鉄は熱いうちに打て」もいいですが、中長期的な目線で考えて自分にあった策を選ぶことが結局は最短距離だと思います。
自分の個性からどの教材を選ぶべきか迷っている方はこちらを読んでみてください。同僚の失敗談も含めて参考になるかと思います。
この上の記事の同僚が翌年に合格した際に使用した下記の通信講座の合格率はちょっと、良い意味でおかしいですね。(合格率については、カテゴリー「通関士試験について」をご覧ください)