自己採点で合格レベルに達しているにもかかわらず「ケアレスミス」で不合格になることは絶対に避けたいところですよね。
今回はケアレスミスが起こる要因として、文章問題を読む際に起こりやすい「誤認」について考察し、対策について書いてみました。
なお、具体例にした問題は通関士ポータルに掲載されている過去問です。
【注意】
法改正などがあることを踏まえて、敢えて正解かどうかは記載しておりません。あくまでも一例として読み流すようにしてください。
目次
1.誤認とは
2.具体例
2.1.When
2.2.Where
2.3.Who
2.4.What
2.5.Why
2.6.How
3.考察
4.対策
5.対策時間を作る
1.誤認とは
誤認とは、
「まちがえて、ちがうものを、それと認めること」です。
ケアレスミスの原因はこの誤認が占める割合が多いのではないでしょうか?
過去問などを解いてみると、通関士試験の問題は誤認を誘うような問題が非常に多いと実感します。
通関士試験は、この誤認を回避して正解を選べるかどうかを試している試験とも言えるのではないでしょうか。
問題文自体が法律特有の難解な文章である上に、誤認を誘うような「ひっかけ」を多用してきます。
なんとなく、すらすらと読んでいると、確実に罠にはまって足元をすくわれるパターンが多いのではないでしょうか。
それでは、具体的にどのような罠が仕掛けられているか見ていきましょう。
2.具体例
以下のような5W1Hで分類してみようと思います。
いつ(When)
どこで(Where)
だれが(Who)
なにを(What)
なぜ(Why)
どのように(How)
2.1.When
When「いつ」に着目してみます。
「60日以内」「3年以内」「3月」といった期間が出てくる問題に関しては、
その期間(日数や年月)に関しては、自然と目に入ってくると思います。
保税蔵置場の許可を受けた者について相続があったことにより、当該許可に基づく地位を承継した者は、被相続人の死亡後60日以内に、その承継について当該保税蔵置場の所在地を所轄する税関長に承認の申請をすることができる。
(第49回・関税法等・第11問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
この日数や年月などの数字は見落とすことはないでしょう。
逆に「 日数や年月を問われている」のではないかと、注意深く見るのではないでしょうか。
注意すべきは、以下のような『「文言で」いつであるか』を問うような問題です。
「輸出申告は、当該申告に係る貨物を保税地域等に入れる前または後に、当該保税地域等の所在地を所轄する税関長に対してしなければならない。」
(第49回・関税法等・第17問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
このように文言でいつであるかを問われているような場合は、そのままスルーしてしまいがちです。
日数や年月などの数字が出てこない場合も、「いつ」であるかを問われている場合があることに注意する必要があります。
さらに注意すべきは、長文のものです。
「輸入の許可の日」「承認された日」などの文言で「いつであるか」を問うような問題で、長文の場合には細心の注意が必要です。
「総合保税地域に置かれた外国貨物で、輸入申告がされた後、輸入の許可がされる前に当該貨物に適用される法令の改正があったものについては、当該貨物につき輸入許可の日において適用される法令による。」
(第49回・関税法等・第16問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
長文の中で「期間」に、関する部分が2回も登場します。
「輸入許可がされる前に」
と、
「輸入許可の日において適用される法令による」
の2つです。
このようなパターンにも注意が必要です。
結局は、文章全体を、整理しながら注意深く見ていく必要があると言えます。
単純に文章の後半にくる部分を問う問題だろうと思って解くと、文章の前半部分に罠が設置してあるというような問題もあるので、注意が必要です。
「だろう」運転は事故のもとです。
英語のように、文節で区切るなど
「見える化(トヨタ式)」対策(後述しています)
をする必要があるかもしれません。
2.2.Where
Where「どこ」に着目してみます。
場所に関しては、「貨物を入れる保税地域」とか「係留場所」などの語句を選択する問題で出題されることが多いですね。
問題文としては以下のようなものがあります。
「関税法以外の法令の規定により輸出に関して許可を必要とする貨物について特定輸出申告を行う場合には、その申告に係る貨物を入れる保税地域等の所在地を所轄する税関長に対してしなければならない。」
(第48回・関税法等・第20問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
「どこを」管轄している税関長かを問われている問題です。
こういった税関長の管轄地を問う問題はよく見かけます。
このようなことから、場所についても注意深くみていく必要があります。
2.3.Who
Who「だれ」に着目してみます。
「関税法第69条の4第1項の規定により輸出差止申立てを行おうとする不正競争差止請求権者は、経済産業省令で定める事項について経済産業大臣の意見を求め、その意見が記載された書面を当該申立てを行おうとする税関長に提出しなければならない。」
(第48回・関税法等・第15問より抜粋)(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
「税関長は、育成者権を侵害する貨物に該当するか否かについての認定手続において、その認定をするために必要があると認めるときは、農林水産大臣に対し、当該認定のための参考となるべき意見を求めることができる。」
(第47回・関税法等・第30問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
このような誰かを問われている問題も良く出てきます。
「関税の徴収について税関長の引継ぎがあったときは、引継ぎを受けた税関長は、遅滞なく、その旨を当該貨物の関税の納税義務者に通知する。」
(第47回・関税法等・第17問より抜粋)(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
このような、2.2.Whereでも登場した、
どこを管轄する「税関長」かを問う問題もよく出ます。
2.4.What
What「なに」に着目してみます。
「なにを」しなければならないかを問う問題に着目してみました。
許可や承認、届出といった文言を気にしていれば、スルーすることは少ないような気がします。
特例輸入者又は特例委託輸入者は税関長に「許可」を受けることにより、税関長が指定した場所以外の場所で関税法第67条の検査を受けることができる。
(第48回・関税法等・第21問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
何がなされる必要があるのかを問うている問題です。
では、次の問題です。
「保税地域にある外国貨物を見本として一時持ち出そうとする場合は、見本の一時持出の許可の申請を行い、税関長の許可を受けなければならない。」
(第51回・通関実務・第14問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
こちらも同様に、何をしなければならないのかを問われています。
次の問題です。
「保税地域以外の場所に置くことを税関長が許可した外国貨物について改装をしようとするときは、あらかじめその旨を税関に届け出なければならない。」
(第51回・関税法等・第23問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
2.5.Why
Why「なぜ」に着目してみます。
以下のような問題は「なぜ」に着目してみる必要がありそうです。
「関税率表が改正されたことにより、適用税番が変更されたにもかかわらず、当該改正前の税番に基づき、輸入者が納税申告をしたと認められるものは、関税法第12条の2第3項(過少申告加算税)に規定する正当な理由に該当しない」
(第51回・通関実務・第4問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
なぜ正当な理由に該当しないのでしょうか。
それは、
「法改正を知らなかった」は正当な理由にはならないということです。
「法の不知は害する」(法律を知らなかったからと言って抗弁はできない)と言うことをなぜか理由は分かりませんが、思い知らせようとしてくる問題です。
これは、「法律を知らなかったから勘弁してください」との言い訳は通用しないということです。
法治国家では「法律を知らなかったからと言う理由は通用しない」というのが常識なのです。
(なぜか日本の義務教育では、憲法をつまむ程度で、詳しく法律を教えてはくれませんが、そういう言い訳は通用しないと言うことですね。それにしても、最近よく思うのが「義務教育で法律をきちんと教えて欲しい」ということです。)
2.6.How
How「どうして・どのように」に着目してみます。
「重加算税は、税関長による賦課決定の手続きを経て、納付すべき税額が確定する。」
(第51回・関税法等・第18問より抜粋)
(法改正があれば、答えが変わることもありますので、解答はご自分でご確認ください。)
この問題は「どのように」税額が確定するかと言うことを意識しておかなければなりません。
3.考察
試験の文章題の「ケアレスミス」対策というと、
「主語と述語を確認しましょう」というようなことがよく言われていると思います。
通関士試験のケアレスミス対策の場合は、
文を構成する成分のすべてを確認する必要があるのではないでしょうか。
指差し呼称だけで、乗り切れるとは思えません。
冒頭では「わざわざ誤認するように作ってあるような問題」という表現をしましたが、
上記の問題を見て、どのように思われましたか?
私は「足場を探りながら進む」というよりも、
「罠や地雷を除去しながら恐る恐る進む」と言っても大げさではないと思います。
つまり、何らかの対策をとりながら進まないと危険です。
4.対策
自分なりのケアレスミス対策を構築して実行するようにすべきだと思います。
問題慣れするということも重要ですが、
文章題で特に長文の場合は、ケアレスミス対策に手間をかけるしかないと思います。
例えば、
「一度読み流した後で、もう一度慎重に読む(ダブル・チェック)」
「5W1Hを意識して、もう一度精査するために読む(トリプル・チェック)」
「見える化作業(トヨタ式)をする」
5W1Hの部分で重要な部分を丸や括弧で囲んだり、アンダーラインを引くなどして、ミスをしそうな部分を「見える化」します。
長文問題を以下のように「見える化」してみました。
(場所)は緑の括弧でくくる
(物)は青の括弧でくくる
(時期)は赤の括弧でくくる
(重要な部分)はさらに括弧でくくったり、下線をつける
(↑ちなみに上記問題はこの内容は「正しい」というのが正解です。
第49回・関税法等・第16問より抜粋し、正しい答えに修正しています )
「指差し・声出し呼称をする」
声を出すことはできないと思いますが、指でなぞるなどのアクションを入れることは重要です。声を出さずに口を動かすことでも大脳に刺激が加わって効果があるとも言われています。
5.対策時間を作る
上記のような、ケアレスミス対策に時間をかける必要があると感じた方は、
ケアレスミス対策の時間込みで試験対策をしていく必要があると思います。
日ごろから問題を解く時間を計測して、
ケアレスミス対策をする時間の余裕があるか確認しながら解きましょう。
もしケアレスミス対策をする余裕がないならば、その時間を作るために何らかの対策を考えても良いと思います。
「奇問・難問・解けない問題を見切る目を養って、無益な問題に関わる時間を減らす 」
「計算問題を早く解けるコツを知る」
(関連記事:通関士試験のケアレスミス対策(02 )(計算)計算頻度を減らす)
などの効率化を図る必要があると思います。
見切ってしまえば、
「こんな罠を何重にも仕掛けて芸が細かいですね」
と思えるようになると思います。
以下の記事にて、ケアレスミス対策をまとめてみれるようにしています。