通関士試験で必要な貿易専門用語について書いています。
前回記事ではインコタームズ(2010年度版)についての概要と、最も重要と思われるFOBとCIFの費用負担について、イメージが湧くように書いてみたつもりです。
今回は、11種類ある各インコタームズの分類について書いてみました。
危険負担よりも、通関士試験に関係がある費用負担を重視して書いています。
ちなみに参考にさせていただいた文献はこちらです。
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目次
1.インコタームズ2010の規則
2.インコタームズ2010の条件
1.インコタームズ2010の規則
インコタームズ2010年版は、
大きく分けて以下の、2つの規則に分かれています。
①いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則
(EXW、FCA、CPT、CIP、DAT、DAP、DDP)
ちなみにインコタームズ2020ではDATが削除され、DPUに変更となるようです。詳細は以下のホームページをご覧ください。
出典:JETRO 「国際商業会議所、インコタームズ2020を発表」
②海上および内陸水路輸送のための規則
(FAS、FOB、CFR、CIF)
①は複数の輸送手段(トラック、鉄道、船舶、航空機など)を複合させて貨物を運ぶ場合にも対応した規則と言えます。
「EXW」「FCA」「CPT」「CIP」「DAT」「DAP」「DDP」の7つの貿易条件が含まれます。
例えばトラックで東京港に輸送したコンテナを船舶に載せ、アメリカ西海岸(LOS ANGELES)に到着後、鉄道輸送に切り替えてアメリカ東海岸(NEW YORK)へ輸送するといったような場合にも対応しています。
いろいろな輸送手段が複合している場合を想定した規則ということです。
ポイントとしては、費用負担の範囲の節目となっている場所が「特定の場所」となっていることです。「港・艀(はしけ)」には限定されていません。
②は海上輸送(船舶)での港から港への輸送の規則と考えると良いと思います。
「FAS」「FOB」「CFR」「CIF」の4つの貿易条件が含まれます。
ポイントとしては、費用負担の範囲の節目となっている場所が、「港・艀(はしけ)」となっていることです。
(ちなみに、保険(危険負担)という観点からこの②の条件を見てみると、
コンテナ輸送の場合には大きなリスクを伴います。
例えば、保険をFOB KOBEで掛けていると、
神戸港のコンテナヤードにコンテナが入ってから船に載せられるまでの間、
無保険の状態となってしまうからです。
阪神大震災の時に、神戸港に置かれていたコンテナ貨物は破損しても無保険の状態で、保険求償ができず、売り手が大きな被害を被ったという事例があります。)
2.インコタームズ2010の条件
全部で11の条件がありますが、
上述の①の規則には7つの貿易条件が、
上述の②の規則には4つの貿易条件が、
以下のように分類されています。
①いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則
(EXW、FCA、CPT、CIP、DAT、DAP、DDP)
②海上および内陸水路輸送のための規則
(FAS、FOB、CFR、CIF)
上述の通り、②は費用負担の範囲の節目となっている場所が、
「港・艀(はしけ)」となっていることがポイントです。
ちなみに「艀(はしけ」が関係しているのはFASのみです。
通関士試験では、
「FOB」と「CIF」について、
「費用負担」の観点から見ると、
どちらも「港」が費用負担の範囲の節目となっている点を押さえておくと良いと思います。
輸入港から先の輸送費用・保険費用が出てくる条件の場合は、それらをきちんと見分けて、CIF価格だけを抽出できるようにすることが試験では重要になってきます。
次回記事では、
①いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則の中の4つ(EXW、FCA、CPT、CIP)について、通関士試験での出題頻度も踏まえつつ、順番に書いていきます。