セオリーを知らないで受験すると必然と難易度も上がります。
通関士試験の場合は、受験勉強を開始した時点でセオリーを知っているか否かで合否が分かれると言っても過言ではありません。
もしかするとセオリーを知らずに受験する人が多いため、通関士試験は合格率が低く難易度が高いと思われているのかもしれません。
セオリーを知らなければ短期一発合格はおろか、次年度に合格できるかも危ういと言えるでしょう。
しかし、セオリーを踏まえて勉強を継続できれば、時間に個人差はあっても合格ルートを進むことができます。
通関士試験で絶対に知っておくべきセオリーについて、少し大げさかもしれませんが山岳登山に例えて説明してみたいと思います。
(一瞬の判断ミスが命取りとなるような山岳登山の話はいろいろな意味で教訓となります。ビジネスの世界でも山岳登山から部下に危機管理能力を学ばせるという会社もあるほどです。)
目次
1.絶対に知っておくべきセオリー
2.セオリーを知らないと遭難する
3.通関士試験は低山だと舐めてかかる
1.絶対に知っておくべきセオリー
いろいろと知っておくべきことはありますが、最初から最後まで念頭に置きつつ対策すべきことは、
『「通関実務」という科目に最優先で取り組む』
ということです。
これが、通関士受験における絶対に知っておかなければならない最重要セオリーと言っても良いと思います。
このセオリーを念頭に置いて受験期間を過ごせるかどうかが、合否を分けると言えます。
それでは、
『「通関実務」という科目に最優先で取り組む』
ということが、なぜそれほどまでに重要なのか簡単に説明していきます。
「通関実務」という科目は、
「与えられた資料(書類・表など)を分析して必要な情報を拾い出し、電卓を叩いて計算して解答を導き出すこと」を要求されます。
別の表現をすると、
「算数」のような「演習」をこなすことを要求されます。
これは、
「電卓を叩きながら計算しつつ、座って勉強に取り組める、
ある程度まとまった時間が必要になる。」
ということを意味します。
学生の方や、社会人になったばかりの方にとっては何の事を言っているか理解できない方もおられるかもしれません。
なぜなら「座って勉強に取り組む」ということは、学生時代は当たり前のことだからです。
しかし、社会人になると「座って勉強に取り組む時間」を作ることは非常に難しくなってきます。
通勤や研修、家事、育児といった本業以外の様々なタスク(仕事)が否応なく「座って勉強に取り組む時間」を奪っていきます。
このようなことから、
特に社会人は、できるだけ早く「通関実務」にとりかかって習熟しておくことが非常に重要になってきます。
「通関実務」に取り掛かるのが遅ければ、習熟度が低いままで本試験に挑むことになりますが、
通関士試験で「通関実務」への習熟度が低いことは致命的と言えます。
なぜ致命的かと言うと、以下のような要因が絡んでくるからです。
1つ目は、時間不足です。
通関実務に対する習熟度が低いままで試験を受けると、試験を解く時間が足りなくなる可能性が非常に高くなります。
時間不足は、計算間違いや見落としといったケアレスミスによる失点の発生原因となります。
また、見直しをする時間を失うことになります。
単純なケアレス・ミスを見直す時間がなかったために不合格になる可能性もあります。
これに加えて重要なことは、
『「正解率の高い問題」にじっくり取り組む時間がなくなってしまう』
と言うことです。
「正解率の高い問題」とは、大多数が正解している問題です。
なぜこれが非常に重要かと言うと、
通関実務には奇問・難問が出題される傾向があるからです。
奇問・難問が出題される試験において合格するためには、
「正解率の高い問題」は確実に解答する必要があることは言うまでもないことです。
「正解率の高い問題」は頻出・基本問題であり、テキストや問題集で良く目にする問題と言い換えることもできます。
このような「正解率の高い問題」を確実に解答できていなければ、
奇問・難問がひしめく試験の合格基準を満たすことは非常に難しくなります。
ちなみに、合格基準は「例年」「満点の60%以上」と設定されています。
「例年」と前置きしているのは、
合格基準が60%から50%程度に引き下げられるような年が存在するからです。
合格基準が引き下げられる年は、難問・奇問を出題し過ぎたために合格者数があまりにも少なくなってしまったために調整を行っているからだと言われています。
平成30年度(第52回)通関士試験の結果を見ると通関実務の合格基準が50%に引き下げられています。
第52回通関士試験の結果について(税関ホームページ)
実際にこの年には難問が出題されています。合格基準を10%引き下げても、合格率が14.6%(前年21.3%)となっています。
特に、このような年には「正解率の高い問題」を取りこぼさないようにできたか否かが、合否を分けることになります。
奇問・難問と「正解率の高い基本・頻出問題」を見分けて、確実に得点できるように見直しも含めた時間の余裕を持つことが重要です。
以上のようなことから、「通関実務」への習熟度が低いことに起因する「時間不足」がいかに致命的であるか理解できると思います。
2つ目は、『通関実務は「初見殺し」の顔を持つ』ということです。
「初見殺し」とは、初めて遭遇すれば絶対に解けないような問題のことです。
落とし穴の場所を知らなければ十中八九、奈落に落ちて命を落とすという某有名ゲームがありますが、そのようなものです。
要は、落とし穴の位置を知っていればどうと言うことはないが、知らなければ初見では確実に落命するという類の問題が散りばめられているのが「通関実務」なのです。
ある程度の量の問題を解いて、いろいろなパターンを知っておかないと解けないような性質を持っています。
以上のようなことから、
「通関実務」への習熟度が低いことは致命的であることがご理解いただけたと思います。
社会人で短期合格を目指しておられる場合は、試験対策開始と同時に「通関実務」に取り掛かる必要があるのです。
そして、それと同時に、暗記が多い科目(通関業法と関税法等)はできるだけ隙間時間を利用して勉強をしていくという取り組み方が必要になってくると言えます。
2.セオリーを知らないと遭難する
「通関実務」は、テキストではたいていは3番目に書かれており、順番に試験勉強を進めていくと最後になりがちです。
このようなことから、読解・暗記科目である「通関業法」と「関税法等」の勉強にじっくりと取り組んで合格レベルに達しているのにも関わらず、
「通関実務」を落として不合格になってしまう方が多いのです。
上記のようなセオリーを事前に知っていれば不合格は避けられたかもしれません。
ここまで読み進めてくださった方の中には、このようなセオリーはたいていはテキストや教材の冒頭に書いてあるだろうと思った方もおられると思います。
しかし、上記のようなセオリーについて冒頭にさらっと書かれているテキストもあれば、まったく書かれていないテキストも存在します。
選んだテキストにセオリーが書かれていなければ、受験開始早々道に迷った状態に陥ることになるでしょう。
ここで少し登山のセオリーについてお話しさせていただきたいと思います。
通関士試験と同様に、登山にも同じようにセオリーが存在します。
ただし、こちらの場合は知らないと生死に関わるものです。
最近では登山ブームの再燃もあり、標高が500メートル程度しかない低山でも遭難事故が頻繁に発生するようになっています。
実は、私の家の近所の低山でも遭難事故が発生しています。
どのような遭難かと言うと、この写真のような整備された登山道がある低山での「道迷い」を原因とするものでした。
一般登山道よりも趣のある「山らしい」別のルートに分け入って迷った後、
遭難してしまったそうです。
通関士試験でも「法律用語」や「貿易実務用語」といった分野で、テキストに書かれていないようなことまで覚えようとされる方がおられるようです。
それは、まさに一般登山道から外れるようなものです。
もしそんな気持ちになられた時は、「法律用語」や「貿易実務用語」に関する別記事をお読みください。
登山の話に戻りますが、
ご存知なければ意外に思うかもしれませんが、山岳遭難の原因の1位は「道迷い」なのです。
道に迷うとセオリーを知らない方は、沢(谷)へ向かって降りてしまって遭難するというパターンが多いようです。
日本の山は、地図上に滝がなくても実際に沢に下りてみると必ず滝があると思っておいて間違いないそうです。
遭難している最中に、滝を無理に登ったり降りようとしたりして滑落事故を起こし、最悪の事態に陥る場合もあるそうです。
その辺のことは「山岳遭難」で調べてみると、恐ろしいほど多くの情報が出てくると思います。
「迷ったら、絶対に沢(谷)に向かって降りてはならない」
「迷ったら必ず登り返す」
もし山に登ってみたい方で、このセオリーをご存知でないならば覚えておいた方が無難だと思います。
ここで、通関士試験の話に戻りますが、
通関士試験の受験経験者の話でよく聞くのが「2年目に合格した」という話です。
もしかすると1年目は「セオリー」を知らず不合格になった方が、
2年目になって不合格の原因となったのが「通関実務」であると気づき、
「通関実務」を重点的に対策するからかもしれません。
とにかく、何事においても、
セオリーは知っていないと危ういと言わざるを得ません。
3.通関士試験は低山だと舐めてかかると危ない
通関士試験というものは、他の難関国家試験と比べると「低山」に見えるかもしれませんが私はそうは思いません。
法律用語や貿易実務用語といった専門用語に対して適切に対応する必要があることに加えて、
座って勉強に取り組む必要がある「通関実務」
という科目を攻略する必要があるからです。
(座って勉強に取り組むということは、通勤などの隙間時間を使って対策するのが難しいと言う理由もあります。)
しかも社会人の場合は、その対策を時間の制約がある中でしなければなりません。
このようなことから、6ヶ月程度の勉強期間で合格できるような
「低山」などと舐めてかかると痛い目にあいます。
登山と同様に、セオリーを知らなければ遭難必至(不合格必至)と言っても過言ではないでしょう。
セオリーを踏まえた上で、自分に最も適した登頂(合格)のためのスタイルを選択できて初めて受験対策の第一歩を踏み出せたと言えるのではないでしょうか。
以下の記事では、実例を挙げて合格する上で最適なスタイルを選択することの重要性について書いています。
受験慣れしていて、自分のスタイルが確立しているという方も、思わぬ箇所で落とし穴に落ちる可能性があります。
有名大学の受験に合格した実績があっても1年目は不合格となってしまった方もおられます。
自分のスタイルは確立していても、通関士試験に関する、定石(セオリー)についてはあまり良く知らないという方は、以下の記事を読み進めてみてください。