通関士試験に挑む社会人の不合格回避ルートについて考えてみました。
本来であれば、「合格のためのルート」とポジティブに書きたいところですが、
特に、通勤や仕事で勉強時間確保の難しい社会人が「リスクを覚悟の上で受験する場合」に焦点を当てて考えてみました。
今回は前回の続きです。
予期せぬ不合格を招くような要因として「バランス」について考えてみます。
今回の内容も前回同様に重要です。前回の原因と合わせて、不合格の原因を成す2大双璧といっても過言ではない「通関実務」について書いていきます。
目次
1.バランスが重要!
2.バランス・コントロール
3.ケアレスミス
1.バランスが重要
前回までで、最も多い受験遭難の原因とでも言うべき「道迷い」の原因と対策が終わりました。
現在位置を把握して最短・安全ルートを模索して対策するということで、不合格の可能性を限りなく低下させられると思います。
さて今回は「道迷い」と併せて、不合格の原因を成す2大双璧といっても過言ではない「通関実務」について書いていきます。
キーワードは「バランス」です。
遭難原因の2番目に来る原因はなんだと思いますか?
遭難の原因の31.9%を占め、2番目に多いのが、
「滑落(16.8%)・転倒(15.1%)」となります。
これが最も遭難に直結しそうな原因のように見えますが、2番目の原因となります。
これがなぜ通関士試験の不合格と関係あるのか不思議に思うかもしれませんが、偶然の一致か、必然の一致か分かりませんが、
不合格になる原因として考えると、非常によく似ています。
山での滑落・転落の原因はバランスを崩してしまうことが考えられます。
そのバランスを崩す原因は「不注意」や「体力不足」などが挙げられます。
通関士試験対策で「バランスを崩す」「不注意」というと、私はあることがすぐに思い浮かびました。
ひとつは、
「通関実務に重点を置くべきであることを知らなかったために、バランスの取れた試験対策ができずに不合格となる」
もうひとつは「ケアレスミス」です。
この2つを軽く見ると必ず落ちるといっても過言ではないと思います。
ケアレスミスに関しては異論の余地はないと思いますが、
通関実務に重点を置いていなかったことが原因で、バランスの取れた試験対策が取れず、不合格に繋がるのはなぜでしょうか?
この要因としては、問題の仕掛けと、解き方や計算に慣れておく必要があるのですが、その錬成に意外に時間がかかるからです。
不合格になった方が本試験の自己採点をした結果、必ずといっていいほど、「通関実務」という科目が原因で不合格になっています。
十分に試験対策をしているので、他の2科目は6割以上の合格ラインに達しているにもかかわらず、「通関実務」は落としてしまって不合格となるのです。
そして通関実務の問題をもっと解いておくべきだったと後悔していることが多いのです。
他の人から聞いたり、ネット上の情報を見ても、
ほとんどの方が「通関実務対策不足」が原因で落とすのが通関士試験だと言うのをよく見聞きします。
普通は試験対策と言うと、まんべんなく全科目に注力するというのが当たり前のように思いますが、通関士試験はその当たり前をやると失敗します。
つまり、常識が通用しないバランスの悪い試験と言えます。
一見すると登り易そうですが、非常に癖が強い山です。
「通関業法」を見ると非常になだらかで起伏のない初心者も気をつけて登れば問題ない
「麓(ふもと)」といった印象です。
「関税法等」も、そこそこの高さがあり、決してあなどれませんが、
「登り甲斐のある山」といった印象を受けます。
ところが「通関実務」に目をむけると、初めは普通の山に見えるのですが、試験対策を進めると「冬山」といった印象に変わります。
通関業法や関税法等がひと段落してから通関実務に目を向けると、雪を戴いた「冬山」が姿を現すようなイメージです。
これは、過去問や問題集を解けば解くほど分かってきます。
私が通関実務科目の問題を初めて見た時は、
「基本を覚えれば、パズルゲームのような感覚で解けるだろう」
と思いました。
法律科目と比較すると取り付きやすいイメージでした。
法律科目を優先して、通関実務は後回しにしても良いようなイメージを抱きました。
しかし、実際はまったく違います。
もし、私が初期に抱いていたこのような印象をお持ちなら、
今回の話で考え方を改めないと、この科目が原因で転倒・滑落してしまい、
即遭難
つまり不合格となるでしょう。
知らなければ容赦なく落とされる「初見殺しの罠の仕掛けられた冬山」が「通関実務」という科目なのです。
この事実を知らなければ落ちるといっても過言ではありません。
大げさに書いているようですが、事実です。
2.バランス・コントロール
対策として、バランスをどう維持するのか?
3科目のうち、参考書や問題集でも3番目に来ていることの多い通関実務ですが、
3番目に回さず、必ず始めらか手をつけておきましょう。
基本を掴んだら、簡単な基本問題を試験対策に初期から盛り込み、多くこなしましょう。
初日から通関実務の問題を見てみる・解いてみる勢いで良いと思います。
心配しなくても他の法律科目は関係なく通関実務は解けます。
まずは基本レベルの問題に多く当たり、奇問・難問ではない問題を取りこぼす確率を下げましょう。
そして勉強量的なバランスより重要なのは、
ほぼ毎日でもいいので通関実務には触れておく必要があるということです。
同じ問題に重複して当たってもよいので、できれば毎日か2日に1問ぐらいは解いていきましょう。
こうすることによって、経験が養われてきます。
最初は、間違えた部分を見て「これは罠だ」と思うかもしれませんが、
経験を積むと、
「なんだ、この程度の仕掛けか」と思えるようになっていきます。
基本レベルの罠(仕掛け)を取り除きつつ、見直しができる時間を作れるようになれば、合格レベルに達していると言っていいでしょう。
ほぼ毎日学習して小ざかしい仕掛けを見抜く能力と、
計算を間違いなくある程度の時間でこなす能力
この2つを錆付かせずに維持することが大事です。
このために毎日とか隔日といったペースで通関実務には取り組む必要があります。
通関実務対策にはこういった対策が必要なため、受験対策としては少し違和感のあるバランスの崩れたやり方をする必要があるのです。
逆にそのことを念頭に置かないで受験に臨むと、バランスを崩して転倒・滑落して即遭難(不合格)です。
しかし、逆に言うと基本レベルを毎日のようにしっかりと解いて、本番で見直しがきちんとできるレベルまで素早く解けるようにすることができれば、合格したも同然と言えるでしょう。
ただし、基本レベルを落とすことは許されないという状況だと言えます。
そこで、重要になるのが「ケアレスミス対策」です。
3.ケアレスミス
通関実務に限らず全科目に共通して言えることだと思いますが、
基本レベルを効率良く、見直しが出来る余裕を残した時間で解けることが合格の鍵を握ります。
そして、これは全てのことについて言えるのが、
「人間は絶対にミスをする」ということです。
このことを常に頭に置いて、必ず見直しをするようにしましょう。
当たり前のことかもしれませんが「解けた。」と思って見直しがおろそかになった瞬間、合格は危ういと思った方がいいかもしれません。
「趣向を凝らした罠が仕掛けられているはずの問題がこんなにすんなり解けるはずがない」と疑って見直す癖をつけるようにしましょう。
法律科目でも、ただの「国語試験」のような問題もあります。
日本語の言い回しをどう解釈するかといった類です。
ケアレスミスがないか見直すときに、
出題者のイメージを具体的に自分で仮想しておいて思い浮かべてみるとよいかもしれません。
実際に出題者がいて、こんな引っかけ問題を作っているのだと思うと見直しをするときの心構えが変わってくると思います。
周到に準備して、
狡猾な罠を見抜き、
ケアレスミスをしないように注意して、
焦らず冷静に
一刻も早く
この山を颯爽と踏破してしまいましょう。
次回は、体調管理などの突発的な不合格となる原因と対策を探ります。
ちなみに、記事を書く際に、参考にさせていただいたプロの動画です。
一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
山で遭難する理由 BC穂高(大田毅彦さん)