通関士試験に挑む社会人の不合格回避ルートについて考えてみました。
本来であれば、「合格のためのルート」とポジティブに書きたいところですが、
特に、通勤や仕事で勉強時間確保の難しい社会人が「リスクを覚悟の上で受験する場合」に焦点を当てて考えてみました。
今回は突発事項対処編です。
体調を崩したり、当日予期せぬ出来事が起きたりすることへの対処です。
目次
1.突発事項への対処
2.ストレスの危険性
2.1.セリエのストレス理論
2.2.Stress is killing you.
2.3.ストレスを低減する対策
3.その他の突発事項について
4.まとめ
1.突発事項への対処
山岳遭難での原因の3番目となるのが「病気」や「疲労」で割合は全体の13.1%を占めます。
それ以降は悪天候、野生動物襲撃、落石、雪崩、落雷、鉄砲水、有毒ガスなどが続きます。すべて突発事項と言えるでしょう。
あくまで、山で遭難の原因となる「病気」や「疲労」に関するものです。
この山での事象を試験に当てはめて考えるのは無理があるのですが、なぜか共通点が見出せるのも不思議なものです。
仕事をしながらの受験勉強も登山のように一歩間違えると健康面での危険が多いと考えてもよいのではないでしょうか。
実際に仕事と試験勉強を両立させようとがんばっていて体調を崩す方も少なくないと思います。
社会人で仕事に追われて忙しい人や学生でも就職活動や単位取得・卒論など大変な方は特に気にかけないといけないのが、身体面・精神面への影響です。
無理をして夜更かしをして勉強をしてしまうと疲労が蓄積し、仕事のパフォーマンスも低下する上に、翌日の勉強の効率も上がりません。
2ヶ月の短期集中で受験勉強を終わらせるので、気合で何とか乗り切れると思っている人はいませんか?
そのテンションはいつまで持続するのか、体力はいつまで持続可能か、ご自分の今の状況を踏まえた上で考えてみる必要があると思います。
ここでの自分の状況のアセスメント(査定)を誤れば、受験勉強の継続はもとより仕事にも支障をきたす可能性も出てくるのではないでしょうか。
仕事と受験勉強のバランスを考えながら継続していく必要があると思います。
なぜ、そのように考えるかと言うと、
仕事をしながらの受験勉強がもたらすストレスの影響を過小評価すると痛い目に遭うと思ったからです。
2.ストレスの危険性
2.1.セリエのストレス理論
カナダの生理学者でハンス・セリエのストレスの研究は有名です。この理論を適用して、文部科学省や自治体が健康維持を呼びかけているのをネット上で見かけます。
どういう研究かというと、ストレスが与える心身への影響です。
いろいろなストレスを与えると人間はそれに応じた身体的・精神的な反応を示すのです。
ここで、特筆すべきはストレスによって身体的な反応が出るということです。
ストレスを受けると、
警告反応期という戦闘モードに入ります。
ここで、身体はストレスに対抗するために血圧・体温・筋肉・血糖値・ホルモンなどを調節してがんばろうとするのです。
よく緊張したときに起こるおなじみの反応が次のようなものです。
不安感情が起き、目(瞳孔)は見開き、毛は逆立ち、呼吸は速くなり、心拍(動悸)は速くなり、抹消の血管が収縮し、手足は冷たくなります。
消化器系の活動は戦闘状態に入ると必要ありません。よって、その活動は停止し、食欲がなくなり、排尿や生殖器の活動も停止します。
上記の反応が起こる具体的な例としては、
仕事で、ミスや異常が発生して急いで対処しなければならない時や、
ナイフを持った誰かに襲われそうになった時を想像してみると想像しやすいかもしれません。
詳しくは、文部科学省のホームページを見てください。
なぜこのような反応が出るのかに関する理由も書いてあります。
そして、ハンス・セリエ博士の研究はウィキペディアに載っています。
上記の身体的な反応を引き起こす原因となるストレスですが、
この研究の理論で見ると「ストレッサー」と呼ばれるストレス因子として分類しています。「生活環境」「外傷性」「心理的」の3つに分類されています。
注目すべきは、生活環境のストレッサーです。
別の文献によると、これにはポイントがつけられています。
このポイント表も有名です。
1位が「子どもの死亡」で94点、2位が「配偶者の死亡」で92点です。
この辺は納得できると思います。注目すべきは以下のような指標です。
抜粋してみました。
14位に「仕事上の失敗」で74点、
19位に「100万円の借金」で69点、
21位に「失恋」で69点、
24位に「退職」で67点、
33位に「結婚」で61点、
35位に「就職」で60点、
36位に「勤務時間や労働条件の変化」で58点、
37位に「転居」で57点、
39位に長期休暇で53点
などが順位付けされています。
これらのストレスは複合的に考えるそうです。
例えば、失恋して退職すると合計で136点になります。
転居後に就職して失恋し、長期休暇に突入すると、239点となります。
どこが限界点かは人それぞれなのでしょうが、これらの指標を軽く捉えるか重く捉えるかは、今後の日本社会のあり方にも影響する指標だと思います。
2.2.Stress is killing you.
意外にストレスは侮れません。
こういう指標も納得がいくものだと思います。
例えば、結婚した後で、引越しした夫婦がいて、夫がビールを飲みながらこう言います。
『転居が57点で、長期休暇が53点で、合計が110点だって?
やっと転居が終わって、こうして長期休暇でくつろいでいる状態が、
「配偶者の死亡」の92点を上回るなんて、馬鹿げてるね。
結婚の61点も加えると、171点だなんて、
そんなことありえないね。』
そんなことを言われると、
こんな心の声が湧き上がって来る人がいるかもしれません。
「転居の準備を私だけにさせていたおいて、長期休暇は家でごろごろしてビールを飲んでいるような粗大ゴミ配偶者なら死亡してくれた方が92点でストレスが少なくて済むんだけれどね」
引越し屋さんに全部お任せでも、仕分けや指示をしたりと大変なのに、金を払えばいいというものではないですよね。
“Stress is killing you.”という言葉も有名です。
この指標に関しては、
これだけストレスが累積しているのは身体にも負担がかかるので、ストレスを減らせるように個人・家族・会社もひっくるめた社会全体で取り組めるように考えていきましょうと捉えるのがいいように思います。
さて、
セリエの研究では、結局は身体がストレスをどうにかしようと働いて、ストレスがなくならなければ、疲弊していく過程をグラフでも示しています。
グラフはこちらをご覧ください。文部科学省:心のケア 各論
限界点があってそれ以上は心が正気でも身体が持たなくなるんです。
マウスを使った実験でも証明しています。
体力とストレス耐性のある人がより長く耐え抜けるというだけで、
ストレスがなくならなかったり、さらに積み重なれば身体が持たなくなると証明しているのです。
より長く耐えうる人材ということで、文武両道の方を優先的に取ろうとする企業の目に間違いはないと思います。
ただ、そのような強い固体を優先的に雇用して酷使しているのが原因なのかどうか分かりませんが、
自殺者3万人を越える日本という国は、やはり世界的に見て異常です。
そんな過酷な日本社会で、通関士試験を受験されている社会人1年目の方は特に多大なストレスがかかっていると考えて間違いありません。(文部科学省のページを参考に自分でスコアを出して見てください。 文部科学省:心のケア 各論 )
あまり負荷をかけすぎないように、できるだけ隙間時間を利用して受験を乗り切れるようにしましょう。
2.3.ストレスを低減する対策
苦痛に思える余計な知識を覚えることに時間をかけたり、試験に出題されもしないような問題を解かされたりするのは、たいていの人にとってストレス以外の何者でもありません。
そういったことを考えた上でも参考書や問題集はコンパクトで要点を押さえた、基本・必出事項に焦点を当てた作りになっているものを選ぶべきです。
何よりも大事なのは、この試験が要求している合格ラインは6割と定められていることです。
それをはるかに上回る得点を要求されてはいません。
ただ、物は考え方です。
今回は、最短・安全コースで合格を目指す方を対象にしていますが、
特に初学者の方で根底理解を目指す方は、網羅的な参考書で完全理解をして合格を目指す方が性に合っていてストレスも少ないかもしれません。
やはり、心身ともに健康第一で、多大な負荷をかけず、着実に合格を目指すというのも、ひとつの安全・最短ルートと言えるかもしれません。
どれを選ぶかは自分の価値観次第ということになると思います。
3.その他の突発事項について
突発事項の例としては、
「受験当日に体調不良になった」
「受験に遅刻した」
「必要物品を落とした」
「受験票がない」
「台風が接近していて交通機関が動くか不明」
など挙げればきりがないと思います。
試験当日に向けて、
考えうる出来る限りの対策をしておいた方がいいと思います。
しかし、あくまでも自分の心身の健康を最優先すべきだと思います。
ここに来て生命という点で山岳遭難と完全に一致したような気がします。
健康と生命こそが最も大切な財産でだと思います。
これを失わない範囲内で、最後まで諦めない努力をするべきだと思います。
台風がまだ接近していないなら、できるだけ近くに前日から宿を取るなどの策も打てますが、
もう暴風圏内に入っていて雨足も強くなってきたというような場合は、
状況によっては自宅待機もしくは避難しないといけない場合もあり得ます。
必要物品を落としたり、忘れたりした場合は買えばいいことです。
そのために海外旅行並みのバックアップ体制で、
貴重品入れを買っておいて、受験票やお金を別に持っておくなどの対策をとっておくことをおすすめします。
当日にできるだけストレスのかからない事前準備(荷造り・下調べなど)を行っておく必要があると思います。
それができていないのは、ストレスも含めた全般的な危機管理が甘いということになるのではないでしょうか。
後に悔いを残さないためにも、講じれる対策は事前に全てしておいた方がいいでしょう。
そうすると、ある限界点を越えたときが「諦め」ではなく、戦略的撤退の時期だということも見えてくると思います。
ある限界点とはもちろん、あなたの健康と安全を脅かすような事態が避けられなくなった状況のことです。
そんな時は、身の安全を優先しましょう。
天災だけでなく、受験勉強と仕事で心身が限界に来ていると思ったときも同様です。
隙間時間以外の勉強は放棄して疲労回復に努めるというのも戦略的に重要な決断だと思います。
4.まとめ
5回に渡って「通関士試験に挑む社会人の不合格回避ルート」について記事を書いてきました。
振り返って思うことは、
自分の心身の健康を最優先して日々の受験勉強に取り組まなければいけないということです。
健康でなければ、受験はおろか勉強も継続できません。
山岳登山も受験も健康でなければできないものだと思います。
無理をなさらず計画的な学習を継続していきましょう!
そして、日ごろから体調を管理して、体力をつけることも試験対策としては重要です。
試験直前まで風邪を引いたりしない体作りの基本を以下の記事からお読みくあださい。
ちなみに、記事を書く際に、参考にさせていただいたプロの動画です。
一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
山で遭難する理由 BC穂高(大田毅彦さん)