今回は法律用語について、みなさんが知りたいと思っている核心部とも言うべき内容について書いてみました。
法律用語を理解したからと言って、通関士試験の問題がすらすら解けるようになるようなことはないということを、この記事を読めば納得が行くと思います。
今回は、第6回目として、
「許可」について簡単に書いてみようと思います。
前回記事で「禁止」を書いていますので、読んでいない方は、こちらを先にお読みください。
軽く読み流すだけで、法律用語について掘り下げて理解することは、あまり意味をなさないことが理解できると思います。
目次
1.陥りがちな落とし穴
「許可」は、問題文中に良く出てくる言葉です。
法律用語としての「許可」を理解することはテキストを読む際にはストレスが減って、条文の内容を憶えやすくなるかもしれません。
ただし、以下のような点に、注意する必要があります。
問題で「許可」なのかどうかを問われた時に、許可の意味をなんとなく理解できていたとします。
そこで、『この場合は「許可」だろう』と安易に判断してしまうと失点につながる場合があります。
「許可」について勉強して納得はできても、その知識は残念ながら「公式」とはならないということです。
以下に、通関士試験で出てくる「許可」の例をいくつか挙げてみますが、冒頭から例外が混じっているので、「公式」としては使えないことが分かると思います。
「保税地域の許可(ただし、指定保税地域は財務大臣の指定 」
「輸出許可」
「輸入許可」
「見本一時持出し許可」
「通関業の許可」
「指定保税地域」は財務大臣の「指定」なのです。
「許可」ではありません。
『保税地域全般については税関長の「許可」が必要なのだろう』と思っていると失点につながる可能性があります。
このように、「許可」がどのような意味を持つかを覚えたとしても、公式のように使うことはできません。
また、この記事で「禁止」を説明する際に以下の条文を引用していますが、ここにも「例外」が存在しています。
赤字部分は「例外」があることを示しています。
関税法第三十条 外国貨物は、保税地域以外の場所に置くことができない。
ただし、次に掲げるものについては、この限りでない。(以下、省略)
他の記事でも書きましたが、法律用語の知識をつけることはテキストを読んだり、問題を解いたりする時にストレスを感じにくくなるかもしれませんが、その知識に頼りすぎると思わぬ落とし穴に落ちる可能性があります。
問題を多く解いて、きっちりと記憶するべきところは記憶するという姿勢が重要となってきます。
2.許可
「許可」について国語辞典で調べると、
「願いを聞き届けること」
『「・・・してもよろしい」と(目下の者に)許すこと』
となっています。
法律用語としては少し違った捉え方になります。
「一般的には禁止の状態にして、特定の場合にのみ禁止を解除すること」
となります。
少し難解な言い回しになっています。
これは前回記事の「禁止」の流れの逆を書いているのだということが、理解できると思います。
「許可」について「禁止」を踏まえつつ、簡単に説明してみます。
国家(行政)が秩序を保つために、特定のことに関しては、
「一定の行為をしないことを命ずる行為」である「禁止」をすることによって、
敢えて「マイナスな状態(不利益な状態)」にしています。
「許可」とは、
特定の場合にのみ、その状態を解除することであると言えます。
以下のような「禁止」をした条文を例に考えてみます。
関税法第三十条 外国貨物は、保税地域以外の場所に置くことができない。
関税法(施行日:令和元年7月1日)
ただし、次に掲げるものについては、この限りでない。 (以下、省略)
という「一定の行為をしないことを命ずる行為」が国家(行政)によって施行されています。
この条文によって、外国貨物は原則として保税地域以外に置くことは禁止されています。
つまり、
本来は何も制限されない「フラットな状態(自然の自由)」に対して、上から圧力をかけて、
「マイナスな状態(不利益な状態)」にされていると言えます。
しかし、ここで、特定の場合にのみ、
そのマイナスな状態を解除するできるというのが「許可」です。
この例での「特定の場合」とは、
輸入の許可の要件を満たして輸入通関の流れが完了した場合となります。
つまり、国家(行政)が定める一定の基準を満たし、適正な手通が完了して、国家(行政)が問題ないと判断した場合は、
許可されて、
禁止されたマイナスな状態(不利益な状態)から
何も制限されないフラットな状態(自然の自由)となって、
内国貨物として、自由に動かせるようになるということです。
初期設定は「禁止された状態」にしておかないと、秩序が保たれない可能性が高いから「許可」が必要と考えることもできると思います。
ちなみに通関士試験では、「許可」に関しては、輸出入や保税地域、通関業などに関連してよく出てきます。
3.まとめ
冒頭でも述べましたが、法律用語の知識をつけることはテキストを読む際や、問題を解く際にストレスを感じにくくなるという意味では役立つと思います。
しかし、その知識に頼りすぎると失点につながる恐れがあります。
どのように対処するかは明確です。
問題を多く解いて、きっちりと記憶するべきところは記憶するということです。
法律用語の意味を知ってストレスなく問題文が読めても、意味を知っているがためにケアレスミスが起こる可能性を常に頭の片隅に置いて取り組む必要があります。
さて、次回は法律用語シリーズの最終回です。
理由があって、かなり簡単に書いてあります。
法律用語についての講義を受けたり、ネットや図書館で調べる前に読んでみてください。
5.参考文献
参考文献:「みんなが欲しかった!法学の基礎がわかる本」
:「よく分かる行政法の仕組み」