通関士試験には法律用語が登場します。
この法律用語を厳密に調べる意味はあるのでしょうか?
深く理解する必要はあるのでしょうか?
今回は、法律用語対策にある落とし穴について考えてみます。
目次
1.法律用語対策は必要か?
2.法律用語対策にある落とし穴
4.掘り下げると深い法律の世界
5.まとめ
1.法律用語対策は必要か?
通関士試験に出てくる法律用語がいくつかあります。
そもそも、それについて先に詳しく知る必要があるのでしょうか?
別の記事でも「法律の勉強はほとんど必要ない」と書きましたが、
テキストを読んで、問題をたくさん解いて、
記憶すべところは地道に記憶していくしかないと思います。
法律用語について全く意味が分からないというのは困ると思うので、
基本的なことについては、理解した方が良いとは思います。
そういった基本的なことは、別の記事で書いてみようと思います。
ただ、法律用語を理解したからと言って、その知識に頼って問題を解こうとすると失敗することもあるので、注意が必要です。
3.法律用語対策にある落とし穴
実際に問題を解いてみると、法律用語が理解できていないと解けないような問題は、そう多くはありません。
法律用語について深い勉強をしなくても、テキストを読んで問題集を地道に解いていて問題なければ、それで良いと思います。
下手に知識をつけて利用しようとすると、思わぬ落とし穴に陥る場合もあります。
例えば「許可」という法律用語が問題で出てきますが、
「許可」についての知識をつけて、
『なるほど、こういう場合が「許可」か!』と納得できたとします。
そこで、
問題を解く時に『こういう場合は、たぶん「許可」だろう』といったように、公式的に問題を解こうとすると失敗するかもしれません。
以下に、通関士試験で出てくる「許可」の例をいくつか挙げてみますが、
冒頭から例外が混じっているので、その辺りは理解できると思います。
「保税地域の許可(指定保税地域は財務大臣の指定)」
「輸出許可」
「輸入許可」
「見本一時持出し許可」
「通関業の許可」
『保税地域全般については「許可」が必要なのだろう』と思っていると「指定保税地域」は財務大臣の指定だったというような場合があるということです。
法律用語の意味など、基本的な部分を理解することは学習をする上で必要だと思います。
しかし、理解を深めたからと言って「公式」として使えるとは限りません。
結局は、テキストを読み、問題をたくさん解いて、
記憶すべきところは地道に記憶していく必要があるのです。
4.掘り下げると深い法律の世界
法律用語も興味を持って調べ始めると、かなりの時間を浪費してしまうことがあります。
時間に余裕のある方は、学びを深め知識を定着させる上で興味を持って調べることは良いことだと思います。
ただし、掘り下げていくと深みにはまってしまい、かえって混乱してしまう可能性もあります。
何を今は優先すべきか考えて、通関士試験短期合格に向けて勉強に取組みましょう。
(ちなみに、以下の赤字で示した部分は、「掘り下げると深い法律の世界」の一例として当時の通関業法の試験範囲に関連して書いた内容ですが、
令和元年(2019年)9月14日の改正によって通関業法の条文から削除されることになりました。
この記事を書いたのが2019年8月ですから、わずか1月余りで私の書いた内容は次年度(令和2年)の通関士試験においては※「時代遅れの無駄な知識」となってしまったと言うことです。
※科目の出題範囲は、令和元年(2019年)7月1日現在で施行されている法令とされているからです
「法律の世界は掘り下げると深い」と言うことに加えて、「法改正により急変する(試験範囲が一変する)」と言うことをご理解いただけると思います。)
以下の赤字で示した部分は、2020年度より通関業法の条文から削除されることになりましたので、ご注意ください。
例えば、通関業法に「成年被後見人(せいねんひこうけんにん)」というものが出てきます。
これについて掘り下げて調べると、以下のようなことを学ぶことになります。
「認知症などで判断能力が不十分である人は契約を結んだりすることは成年と言えども困難であり、こうした人を援助するために「成年後見人制度」というものが存在します。判断能力の程度に応じて「後見人」「保佐人」「補助人」が付きます。これらの援助を受けるかたを「成年被後見人」「成年被保佐人」「成年被補助人」といいます。」
これだけでは理解することが難しいと感じましたか?
その場合は、以下のように成年後見人制度について掘り下げて調べて行くことになります。
成年後見人制度について
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、契約締結や預貯金の管理といったことが難しい場合があります。
そんな方たちのために、代理して契約などの法律行為をしたり、法律行為をするときに同意を与えたり、不利益な法律行為を取り消したりして保護します。
この法定後見制度は、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており,判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を選べるようになっているというものです。
この制度を実務的なレベルで見てみると、以下のような判断能力の程度を分ける尺度を知っておく必要があるでしょう。
成年被後見人
常に判断能力を欠いている方
(例:脳死認定をされた方、重度の認知症を患っている方など)
成年被保佐人
判断能力が著しく不十分な方
(例:日常の買い物程度ならできるが、大きな財産を購入したり、契約を締結したりすることは難しい方、中度の認知症の方など)
成年被補助人
判断能力が不十分な方
(例:日常の買い物はひとりでも問題なくできるが、援助者の支えがあったほうが良いと思われる方、軽度の認知症の方など)
このようなことを勉強していくと通関業法の欠格事由の成年被後見人について深い知識は身につくかもしれませんが、この知識は得点に直結しない知識であることも理解できると思います。
とにかく、成年被後見人というものがあって、それに該当すれば欠格事由にあたるのだと覚えるのが最短コースだったりします。
「成年で後見人を被る(受ける)必要がある人」程度の知識でいいと思います。
5.まとめ
まずは、参考書で分からない用語はマークしておく程度で全体を理解するように努めましょう。
問題集に一刻も早くとりかかり、分からない用語があって詰まったら、すぐに解答と解説を見ましょう。
用語が分からない場合は国語辞典やネットで調べると容易に理解できることもあります。
当サイト内の記事で参考になるものもあるかもしれません。
それで解決できない場合はいったん無視して先に進みましょう。
テキストも問題集も全体を見終わった後で振り返ってみると、解けなかった問題が解けるようになっている場合も往々にしてあります。
「通関士完全攻略ガイド」のような網羅的なテキストを利用したりすれば疑問は段々となくなっていくと思います。
あなたが理解したいと感じている法律専門用語に対する分かりやすい解説が、ネットや図書館を探しまわっても見つからない場合は、「掘り下げると深い法律の世界」に足を踏み入れている可能性があります。
「行政法」を独立して学ぶことが必要な法律系の資格を受ける予定がなければ、今のところは、法律の世界に深く踏み込むのはやめておく方が無難です。
そうは言っても、法律用語の知識を身に付ければ、その知識を利用して問題が楽に解けるような気がして知りたいという気持ちになるのではないでしょうか?
その知識が問題を解く上での「万能な公式」になるような気がしていますか?
そんな時は、以下の記事から読み進めてみてください。
疑問が解決するかもしれません。
疑問が解決すれば、後は地道に記憶していくのみです。
あまり法律的な用語や知識に拘って時間を犠牲にしないようにしましょう。