通関士試験で必要な貿易専門用語について書いています。
前回の記事では、DDPという条件について書いてきました。
今回は、FASという条件について書いてみます。
危険負担よりも、
通関士試験に関係がある費用負担を重視して書いています。
通関士試験での過去10年間の出題頻度についても併せて見ていきます。
FOBとCIFについては最重要項目として、すでに記事にしていますので以下の記事をご覧ください。
通関士試験の独学短期合格に必要な貿易専門用語の基礎知識（FOBとCIF）
当記事は以下の書籍を参考文献とさせていただいております。
↑今のところ、この書籍が価格も品質も最高ランクだと思います。
会社に置いてあるのではないでしょうか？
目次
1.インコタームズの規則について
簡単に関連事項としてインコタームズ（2010年度版）の2つの規則について少し触れておきます。
①いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則
（EXW、FCA、CPT、CIP、DAT、DAP、DDP）
ちなみにインコタームズ2020ではDATが削除され、DPUに変更となるようです。詳細は以下のホームページをご覧ください。
出典：JETRO 「国際商業会議所、インコタームズ2020を発表」
②海上および内陸水路輸送のための規則
（FAS、FOB、CFR、CIF）
以上の2つの規則がありますが、
①は複数の輸送手段（トラック、鉄道、船舶、航空機など）を複合させて貨物を運ぶ場合にも対応した規則と言えます。
いろいろな輸送手段が複合している場合を想定した規則ということです。
ポイントとしては、費用負担の範囲の節目となっている場所が「特定の場所」となっていることです。「港・艀（はしけ）」には限定されていません。
これに対して、
②の規則に分類される「FAS」「FOB」「CFR」「CIF」といった貿易条件は、
費用負担の範囲の節目となっている場所が「港・艀（はしけ）」に限定された海上輸送（船舶）の規則に含まれます。
通関士試験で重要な、
「FOB」と「CIF」は②の規則に分類され、
「費用負担」の観点から見ると、
「港」が費用負担の範囲の節目となっている点を押さえておく必要があります。
今回説明するFASは②の規則に分類されています。
2.FAS
概説
FAS（Free Alongside Ship）
「船側渡し条件」と呼ばれるものです。
「指定船積港において、買い手によって指定された本船の船側※に貨物が置かれた時に、引渡したことになる」という条件です。
この引渡しの時に危険負担責任も買い手に移ります。
売り手は輸出通関を行うことになっています。
※船側とは、埠頭や艀（はしけ）の上とされています。
この条件は、在来船で使用される条件とされていますので、
コンテナの場合は、FCAという条件を使うべきとされています。
在来船とは、コンテナに入らないような大型の貨物（鋼材、重量物、プラントなど）を運ぶクレーン設備を持つ船のことです。
在来船が船積みできるようにするためには、
貨物を置く場所は、船のクレーンが届く
埠頭（岸壁）や艀（はしけ）でなければなりません。
ちなみに艀（はしけ）とは、平型の運搬用の船舶のことです。
見たことがなければ、ウィキペディア（艀）で調べてみてください。
港湾関係のイメージが湧かない方は以下の記事をお読みください。
知っておくと、テキストを読んだり、問題を解く際に分かり易くなるかもしれません。
費用負担
「指定船積港において、買い手によって指定された本船の船側※に貨物が置かれるまでの費用」および「輸出通関費用」を売り手が負担するというものです。
費用負担の範囲の節目となっている場所が「港・艀（はしけ）」に限定されています。
まとめ
以下のような費用を売り手（輸出者）が負担するのが、
「船側渡し条件」となっています。
・貨物を検査・梱包等をして出荷準備するまでにかかる費用
および
・売り手の事業所から、港（船側）までの輸送費
および
・船側への荷卸し（荷捌き）費用
および
・輸出通関費用
以下の英文の緑色部分は「費用負担の範囲の節目となっている場所」です。
インコタームズ2010の英文はICCホームページより引用しています。
“Free Alongside Ship” means that the seller delivers when the goods are placed alongside the vessel (e.g., on a quay or a barge) nominated by the buyer at the named port of shipment. The risk of loss of or damage to the goods passes when the goods are alongside the ship, and the buyer bears all costs from that moment onwards.
出典：ICCホームページ
通関士試験での出題頻度
通関士試験（第43回～第52回の10回分で集計）では、
出題されていません。
次回は、CFRと言う条件について書いていきます。
CFRは計算問題などで良く見かけるため、知っておいた方が良いでしょう。
