通関士試験に合格するために必要な基礎となる知識を簡単にまとめてみました。
これは独学や短期一発合格といったことに関係なく必要な知識です。
有名な予備校や通信講座テキストが敷設したレールの上に乗っていれば、合格にたどり着けるかと言うと、一概にそうと言い切れないのが現状だと思います。
きちんと合格するためのセオリーを踏まえた思考をしながら勉強できているか確認してみてください。
前回は以下の記事「問題集」でした。
今回は、「難易度を上げる要素」です。
通関士試験の難易度が高い理由についは、『「通関実務」という科目が難しいこと』、「難解な文章問題を読解する必要があること」、『「法律用語」や「貿易実務用語」が絡んでくること』など様々な要素があると思います。
しかし、簡単なようで、見落としがちな難易度を上げる要素があります。
それは、「時間」と「環境」という要素です。
この点を踏まえて試験対策することが、非常に重要だと思います。
この点について、医師国家試験と比較しながら説明してみます。
目次
1.合格率の比較
2.能力的な要素
3.時間的な要素
4.環境的な要素
5.時間は環境も奪う
6.まとめ
1.合格率の比較
通関士試験の合格率は、近年10%前後で推移しています。
10人に1人程度しか合格できない「難易度の高い国家試験」であると言えます。
これに対して、医師国家試験の合格率は90%前後で推移しています。
2.能力的な要素
医師国家試験を受けるには、まずは医学部に合格しなくてはなりません。
そのためには、
「計画的に膨大な量の知識を習得し、試験で解答できる応用能力を身につけて医学部に合格する」
という条件をクリアする必要があります。
この点に関しての能力の差について、通関士試験の受験者とは比較しようがないのですが、
そのような能力面での要素だけでなく「時間」と「環境」という要素が通関士試験の難易度に大きく関係していることを受験計画を立てる際には十分考慮する必要があります。
3.時間的な要素
医師国家試験の受験者は、医学部での6年間の講義と実習を通して「人命にかかわる医学的知識」について徹底的に学習します。
それに比べて、通関士試験の受験者は、たいていの方が仕事をしながら学習することを余儀なくされます。
徹底的に勉強に専念する時間が圧倒的に少ないと言って良いでしょう。
こういった時間的な要素が通関士試験の難易度を上げている要因と考えられます。
4.環境的な要素
医学部では実習があります。
解剖実習や、病棟実習などを行いながら知識を身につけていきます。
そして、医学部の実習では指導者が必ずいます。
通関士試験では、「通関実務」という演習をすることになります。
医学部の「実習」は現場で実際に目にするものが対象となりますが、
通関士試験の「演習」は現場とは違う模擬的なものを使って知識を身につける必要があります。
(実際に献体(解剖)や患者に接する「実習」と、通関実務という模擬的な「演習」を比較すると、どちらが取り組み易そうでしょうか?)
そして、通関士試験の演習では指導者は必ずしもいるとは限りません。
通信講座や予備校の指導者がいる場合は別ですが、独学には指導者はいません。
解釈や解き方に誤りがあっても、それを監督して、修正してくれる人はいません。
通信講座や予備校と言えども、演習を実際に事細かに指導してくれることは非常に稀なことだと思います。
こういった環境的な要素も通関士試験の難易度を上げる要因となっていると考えられます。
5.時間は環境も奪う
合格したければ、良い指導者に師事すべきだと思うかもしれませんが、
指導者に師事する時間を作ることが、たいていの社会人には難しいのです。
「実習」や「演習」という難しい作業をする「環境」では、指導者がいた方が良いのですが、
そんな指導者がいる良い環境に赴く時間を社会人は作ることが難しいと言えます。
つまり、時間的な要素が、良い環境下で学習する機会を奪っていくのです。
また、通関士試験の「演習」は、「模擬的資料(書類・表など)を分析し、電卓を叩いて計算して解答する」という作業に専念する時間とスペースを要します。
しかし、仕事をしながらでは、このような「演習」に専念できる環境に身を置く時間を持つことは非常に難しくなります。
6.まとめ
以上のようなことから、「時間」と「環境」という要素に配慮した受験計画を立てなければ、通関士試験の難易度は非常に高くなり、合格は困難になると言えるでしょう。
この「時間」と「環境」への配慮が十分にできていなかったため、1年目は不合格になる方が多いのではないでしょうか?
通関士試験に合格するためには、
演習ができる「時間」と「環境」を確保することは非常に重要です。
少々強引ではありましたが、医師国家試験を比較対象としてみました。
その理由としては、「時間」と「環境」という大きな制約があることを考えず、受験勉強をして不合格になってしまった場合、
自分自身の能力的な問題だと単純に考えることは、あまりにも酷だと言いたかったからでもあります。
実は、「酷」だと感じる要素は、これ以外にもあります。
それは、試験問題の質です。試験対策をする上でも重要な要素になります。
次回は、通関士試験の「悪問」について書いてみます。